【感想】『アナベル・リイ』小池真理子|私は呪われているの?それとも護られているの

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アナベル・リイ アナベル・リイ|小池 真理子

ケイチャン

ケイチャン

【2022年122冊目】
今回ご紹介する一冊は、
小池真理子 著
『アナベル・リイ』です。

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【感想】「私は呪われているの?それとも護られているの」

幽霊奇譚

若くして命を落とした友人は亡霊となった
いつまでも私に纏わりつき
そして時に彼女は人の命を奪うんだ

あなたは幽霊を見たことがありますか?
その幽霊が知っている人なら怖いことでしょう
ましてや自分がその人をあなどって下に見ていて
その人の夫を愛していたならば、なおのことです

一心に愛を注ぐ女性
それが売れない舞台女優の千佳代(ちかよ)です
その演技は酷いありさま!
しかし彼女は人もうらやむ魅力的な男性と付き合っていたのです

主人公の悦子(えつこ)は、千佳代の唯一の友人でした
だが悦子は千佳代を侮って自分より下に見ていたのです
島根から来た田舎娘
演技は大根
性格も開けっぴろげで深みがない
たいしたことない女の子だこと・・
でも千佳代は悦子が密かに恋心を抱く、飯沼の恋人なのだ
悦子は千佳代に対して複雑な思いを持ちます

そんな中、彼女は突然死んでしまう

戸惑い悲しむ悦子でしたが
同時に飯沼との関係が進むことを期待する
それは後ろめたく暗い気持ち
死んだばかりの友人の夫に手を出してよいはずない
しかし気持ちとは裏腹に
心と体は飯沼を求めてしまう
そして・・

千佳代の亡霊が現れた

「私は呪われているの?それとも護られているの」

悦子の働くバーに
千佳代と過ごした自宅の応接室に
現れる千佳代の亡霊
悦子は総毛立つ

悦子と千佳代の関係描写が見事です
人と人との関係に平等なんてない
私と彼女は6対4くらいね・・
なんて気持ちが透けて見える

けれどもそれは友情がないってことではない
相手を思い合う気持ちは確かにある
それは複雑で度し難い感情の起伏
それが見事に描かれています

幽霊を恐れる気持ちとは逆に
悦子と飯沼の関係は急速に縮まる
こんな私を千佳代が許すわけない
罪悪感に恐れ慄くうちに
ついに1人、また1人と
人が不可解な死を遂げる

悦子と飯沼の運命はいかに?

千佳代の亡霊に恐怖する悦子
しかし恐れの中にも
わずかに破滅を希求するような
甘やかさがあるように
僕は感じました

複雑怪奇な心の内を描くこの作品
それは恋愛や友情の
喜びや恐れ、そして儚さを表しているようです

死してなお亡霊となるほどに人を愛する
そんな人があなたにはいますか?

作品紹介(出版社より)

彼女の愛が、 私の人生を狂わせた――。幻想怪奇小説の到達点。

怯え続けることが私の人生だった。
私は今も、彼女の亡霊から逃れることができないのだ。


1978年、悦子はアルバイト先のバーで、
舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。
特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。
しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、
予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。

千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、
彼女の亡霊が現れるようになり――。

作品データ

タイトル:『アナベル・リイ』
著者:小池真理子
出版社:KADOKAWA
発売日:2022/7/29

作家紹介

小池真理子(こいけ・まりこ)

1952年東京生まれ。
1989年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。
1995年『恋』で直木賞受賞。
1998年『欲望』で島清恋愛文学賞受賞。
2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞受賞。
2012年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。
主な著書に『水の翼』『無伴奏』『望みは何と訊かれたら』『神よ憐れみたまえ』『月夜の森の梟』など。

小池真理子の作品紹介

『恋人と逢わない夜に』1984/3/19
『無伴奏』1990/7/1
『会いたかった人』1991/10/1
『追いつめられて』1993/1/1
『墓地を見おろす家』1993/12/17
『危険な食卓』1994/1/1
『妻の女友達』1995/4/13
『欲望』1997/7/1
『水の翼』1998/11/1
『恋』1999/4/1
『冬の伽藍』1999/6/1
『蔵の中』2000/10/1
『映画は恋の教科書』2004/12/1
『愛するということ』2005/9/9
『夜の寝覚め2005/10/20
『闇夜の国から二人で舟を出す』2005/10/28
『青山娼館』2006/1/31
『瑠璃の海』2006/10/18
『望みは何と訊かれたら』2007/10/1
『虹の彼方』2008/7/18
『無花果の森』2011/6/1
『沈黙のひと』2012/11/28
神よ憐れみたまえ』2021/6/24
『月夜の森の梟』2021/11/5
アナベル・リイ』2022/7/29
…など多数

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