【本の感想】『ヒロイン』桜木紫乃|逃亡する日々が、私の安寧なの

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ヒロイン|桜木紫乃

ケイチャン

ケイチャン

【2024年11冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桜木紫乃 著

『ヒロイン』です。

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【感想】「逃亡する日々が、私の安寧なの」

逃亡小説

こんな罪は受け入れられない
逃げる
逃げる
どこまでも、いつまでも・・
明けない夜の物語です

夜の闇にも、温もりはあるんだ

オウム真理教の地下鉄サリン事件を
思わせる毒ガス散布事件が起こる
主人公はその実行犯の
協力者と思われる女性です

毒母から逃げ
新興宗教で暮らす岡本啓美(ひろみ)
穏やかな生活に満足していたが
そんな日々が唐突に終わりを告げる

私についてきなさい
教団幹部の男性につれられ
渋谷の街を、地下鉄を
グルグルとただひたすらに
歩かされる
・・これは何の修行なの?

だが啓美の知らないうちに
幹部の男は毒ガスを散布していたんだ
大混乱する街を平然と歩く男の姿に
啓美は自分がとんでもない事件に
巻き込まれてしまったことに
気が付くのでした

そして始まる
逃亡生活
だが自分の名前を捨てて
流浪する日々で
啓美は逆に
充実した毎日を送るのでした

「逃亡する日々が、私の安寧なの」

啓美は受け身の主人公です
主体的に動くことは少なく
まわりから受ける事態に
反応するだけです

・・難しい主人公でした

けど弱くありません
逆に粘り強く
迫ってくる相手に
がっぷりと四つに組むような
逞しさがありました

そして我が強い

こんな罪は受け入れられないと
逃げる逃げる・・17年も
女性がいちばん輝く若い時代を
逃亡生活に費やす胆力がスゴイ

そして危険とわかっていても
ただひとつの恋に
真っ向から立ち向かう姿に
震えるような気持ちになりました
女の子ってスゴイな

フィクションなのに
実話の様な重みを持った物語です
重量感のあるストーリ展開に
飲み込まれます

あなたも啓美と一緒に
ひりつくような逃亡生活を
味わってみませんか?

作品紹介(出版社より)

世間を震撼させた白昼のテロ事件から17年。
名を変え他人になりすまし、
“無実”の彼女はなぜ逃げ続けたのか?

1995年3月某日。渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた23歳の信者岡本啓美(おかもとひろみ)。この日から、無実の啓美の長い逃亡劇が始まった。他人を演じ続けて17年、流れついた地で彼女が見つけた本当の”罪”とはいったい何だったのか――。

作品データ

タイトル:『ヒロイン』
著者:桜木紫乃
出版社:毎日新聞出版
発売日:2023/9/15

作家紹介

桜木 紫乃(さくらぎ・しの)


1965年、北海道釧路市生まれ。
2002年、「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、2007年、同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。
2013年、『ラブレス』で島清恋愛文学賞受賞。
『ホテルローヤル』で直木賞を、2020年、『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。
ほかの著書に『硝子の葦』『起終点駅(ターミナル)』『裸の華』『ふたりぐらし』など多数。『孤蝶の城』は『緋の河』の第二部にして完結篇である。

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桜木紫乃の作品紹介

『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)
ヒロイン』(2023/9/15)

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