
ケイチャン
【2025年19冊目】
今回ご紹介する一冊は、
寺地はるな 著
『雫』です。
もくじ
【感想】「変わらずにいられる人生なんて、ない」
永遠ってなーに?
40歳を超えて変わりつつある日々の中
変わらない友情を持ち続ける
4人の男女の物語です
もうすぐ会社は廃業する・・
解体を待つビルの一室で
寂し気に佇む主人公の姿から
物語は始まります
高峰ビルに集った
中学校の同級生4人組は
明日から違う場所で
それぞれの人生を歩む
これまでの30年を振り返り
時をさかのぼる形で
ストーリーは進みます
彼ら彼女らはどう生きてきたのか?
宝飾デザイナーの永瀬さん
どうやら恋愛にあまり興味ないタイプで
40歳独身ながら好きな仕事をして
まーまー楽しく暮らしてきました
そんな彼女の友人が
裕福な家庭に育ち見栄えのよい、高峰くん
おっとりしながら繊細な心を持つ、森くん
そして家庭に恵まれなかった、しずくちゃんです
物語は時計の針を巻き戻し
4人の人生の来し方が描かれます
幸いがあれば、不幸もあり
時代が変われば、価値観も変わる
変わり続けてきた人生の日々です
寺地はるな作品の多く登場する
ダメな人間たち
人の弱さを描くのがホントに上手く
登場人物たちのじれったさに
カラダを搔きむしりたい気持ちになる
本作のモチーフとなるのが宝飾品です
買った当時はピカピカに美しい宝石も
時が立てば色褪せ、デザインも古臭くなる
リフォームジュエリーという永瀬さんの仕事が
そのまま本作のテーマになっています

ケイチャン
人も宝石も、手入れが必要ですね
弱さによって繋がる
強い人の絆を描く

ケイチャン
寺地はるな作品らしい
優しい物語でした

ケイチャン
あなたは自分の弱さを
さらけ出せる
大切な人が
いますか?
作品紹介(出版社より)
1996年冬、中学卒業を控え、卒業制作のレリーフづくりで同じ班になった永瀬珠、高峰能見、森侑、木下しずくはそのモチーフを考えていた。進路に迷う美術部員の永瀬、男女問わず学校中の人気者の高峰、誰に対しても優しくおっとりした森、物静かで周囲と距離を置く転校生のしずく。タイプの異なる4人がモチーフに選んだのは雫型(ティアドロップ)だった。
「古代、雨は神々が流す涙であると考えられていました。雨の雫はあつまって川となり、海へと流れ込み、やがて空にのぼっていく。その繰り返しが『永遠』を意味する、という説があります」
「永遠って、なんですか? 先生。そんなもの、あるんですか?」
美術教師が教えた「永遠」の意味。以来、永瀬や高峰の心に「永遠」が静かに宿り、やがて4人は別々の道を歩み始めた――。
時は流れて2025年春、リフォームジュエリー会社『ジュエリータカミネ』は、入居するビルの取り壊しにあわせて営業を終了した。ビルからの退去当日、デザイナーとして勤めた永瀬は将来への不安を抱えつつも次の仕事を決められずにいた。かたや、信念を持って店を立ち上げた高峰は、妻との離婚や自身の体調を崩して以来すっかり覇気がない。森は誰もが知る企業に勤めたものの上司のパワハラによって心に傷を負った。地金職人として独立したのち離島へ渡ったしずくは、いまも自分の感情を表すのが苦手なままだ。
30年の道のりの過程にある仕事、結婚、親子関係……。人との関わりでつまずきながらも、一方で人とのつながりによって救われてきた不器用な4人は、ままならない人生にもどのようにして前へを向こうとするのか。「永遠」は不変で繰り返されるからこそ続くものなのか、それとも――。物から物へ受け継がれるジュエリー、人から人へと受け継がれる想いを通して、つながりの尊さとささやかで慈しみ深い日常を描く珠玉のヒューマンドラマ。
作品データ
タイトル:『雫』
著者:寺地はるな
出版社:NHK出版
発売日:2024/11/6
作家紹介
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。 大阪府在住。
2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。
他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。
寺地はるなの作品紹介
『ビオレタ』(2017年1月)
『今日のハチミツ、あしたの私』(2017年3月)
『みちづれはいても、ひとり』(2017年10月)
『架空の犬と嘘をつく猫』(2017年12月)
『大人は泣かないと思っていた』(2018年7月)
『正しい愛と理想の息子』(2018年11月)
『夜が暗いとはかぎらない』(2019年4月)
『わたしの良い子』(2019年9月)
『希望のゆくえ』(2020年3月)
『水を縫う』(2020年5月)
『やわらかい砂のうえ』(2020年7月)
『彼女が天使でなくなる日』(2020年9月)
『どうしてわたしはあの子じゃないの』(2020年11月)
『ほたるいしマジカルランド』(2021年2月)
『声の在りか』(2021年5月)
『雨夜の星たち』(2021年6月)
『ガラスの海を渡る舟』(2021年9月)
『タイムマシンに乗れないぼくたち』(2022年2月)
『カレーの時間』(2022年6月)
『川のほとりに立つ者は』(2022年10月)
『白ゆき紅ばら』(2023年2月)
『わたしたちに翼はいらない』2023/8/18
『こまどりたちが歌うなら』2024/3/26
『いつか月夜』2024/8/8
『雫』2024/11/6