【感想】『図書館のお夜食』原田ひ香|胸に秘めた気持ちを聞いて欲しい

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図書館のお夜食

ケイチャン

ケイチャン

【2024年29冊目】

今回ご紹介する一冊は、

原田ひ香 著

『図書館のお夜食』です。

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【感想】「胸に秘めた気持ちを聞いて欲しい」

図書館小説

開館時間は19時から24時まで
亡くなった作家の蔵書を集める
変わった図書館
そこで働く人々を描く
群像小説です

夜は秘密が語られる時

務めていた書店を
辞めざるを得なくなった
樋口乙葉(ひぐち おとは)ちゃん
トラブルからの退職で
傷ついています

そんな彼女にリクルートが来る

ウチの図書館で働きませんか?
お給料は高くありませんが
無料の寮があり
まかないの食事が付きますよ

そうして乙葉ちゃんは
夜間のみ開館する
私設図書館で司書として
働くことになりました

そこは傷ついた鳥が
羽を休める場所
おそるおそるという感じで
同僚たちと距離をつめ
打ち解けてゆく過程が
語られてゆく

「胸に秘めた気持ちを聞いて欲しい」

図書館で働く人たちは
様々な事情で悩んだり
傷ついたりした者ばかり
その秘密の事情が
ゆっくりと物語られてゆく

トラブルを乗り越えて
同僚たちと絆を強めていき
乙葉ちゃんは持ち前の
明るさや前向きさを
取り戻してゆく

人間再生の物語です

表題にある「お夜食」は
有名な本に登場したお料理を再現します
本好きにはたまらないことでしょう
興味深く読めました

しかし物語に毒をひそませるのが
原田ひ香作品の特徴です
本作の毒とは
オーナーです

ラストシーンでオーナーと
会話する乙葉ちゃん
そこでダンッと
拒絶されるのです

僕はちょっと混乱してしまいました

でも話せば分かり合えるというのは
幻想です
分かって欲しくない
理解されなくていい
そういう思いも、ある

人との距離の難しさ
理解せずともよいという
人間関係を描くところが
さすが原田ひ香!と思いました

人の数だけ事情があり
事情の数だけ秘密がある
だから人と分かり合うって
素晴らしいんでしょうね

苦みの強いビールに合うような
複雑な味わいの物語でした

作品紹介(出版社より)

「三千円の使いかた」「ランチ酒」の原田ひ香が描く、
本×ご飯×仕事を味わう、心に染みる長編小説。

東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、開館時間が夕方7時〜12時までで、そして亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。乙葉は「夜の図書館」で予想外の事件に遭遇しながら、「働くこと」について考えていく。

すべてをさらけださなくてもいい。
ちょうどよい距離感で、
美味しいご飯を食べながら、
語り合いたい夜がある。

作品データ

タイトル:『図書館のお夜食』
著者:原田ひ香
出版社:ポプラ社
発売日:2023/6/21

作家紹介

原田ひ香(はらだ・ひか)

1970年神奈川県生れ。
2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。
2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。
著書に『三千円の使いかた』『そのマンション、終の住処でいいですか?』『古本食堂』『一橋桐子の犯罪日記』『ランチ酒』『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』『人生オークション』『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』『ミチルさん、今日も上機嫌』『三人屋』『ラジオ・ガガガ』などがある。

原田ひ香の作品紹介

『はじまらないティータイム』(2008年1月)
『東京ロンダリング』(2011年7月)
『人生オークション』(2011年10月)
『母親ウエスタン』(2012年9月)
『アイビー・ハウス』(2013年3月)
『彼女の家計簿』(2014年1月)
『ミチルさん、今日も上機嫌』(2014年5月)
『三人屋』(2015年6月)
『ギリギリ』(2015年9月)
『復讐屋成海慶介の事件簿』(2015年11月)
『彼女たちが眠る家』(2016年6月)
『事故物件、いかがですか?』(2016年9月)
『ラジオ・ガガガ』(2017年5月)
『ランチ酒』(2017年11月)
『三千円の使いかた』(2018年4月)
『DRY』(2019年1月)
『そのマンション、終の住処でいいですか?』(2019年4月)
『ランチ酒 おかわり日和』(2019年7月)
『まずはこれ食べて』(2019年12月)
『口福のレシピ』(2020年8月)
『一橋桐子(76)の犯罪日記』(2020年11月)
『サンドの女 三人屋』(2021年2月)
『ランチ酒 今日もまんぷく』(2021年6月)
『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』(2021年9月)
『古本食堂』(2022年3月)
財布は踊る』(2022年7月)
老人ホテル』(2022年10月)
『DRY』 2022/12/13
『口福のレシピ』 2023/02/07
『まずはこれ食べて』2023/04/12
『図書館のお夜食 2023/06/21
『古本食堂』2023/09/18
喫茶おじさん』 2023/10/12
図書館のお夜食』2023/6/21


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