【感想】『老人ホテル』原田ひ香|投資はまず節約から始めましょう!

374 views
老人ホテル|原田ひ香

ケイチャン

ケイチャン

【2023年8冊目】

今回ご紹介する一冊は、

原田ひ香 著

『老人ホテル』です。

PR

【感想】「投資はまず節約から始めましょう!」

貧困小説

もしアナタが今
月に1万円スマホ代を支払い
頻繁にコンビニを利用して
今月も金が無い~
と嘆く方ならば
今すぐに読んでいただきたい
そんな現代のバイブルです

無知は私の罪じゃない!
大家族の末っ子としてほったらかしにされた
天使(えんじぇる)が老人だらけホテルで
人生の師を得る、人生再建の物語です

大家族の末っ子として生まれ
誕生の時から搾取されていた

長女、大天使(みかえる)
長男、堕天使(るしふぁあ)
次男、羅天使(らふぁえる)
次女、我天使(がぶりえる)
3男、亜太夢(あだむ)
3女、衣歩(いぶ)
そして4女の天使(えんじぇる)が主人公です

すごいキラキラネームですね笑笑

両親は専業の生活保護受給者
意図的に労働を放棄し
惰性のように生きる父母を
憎む天使ちゃん
私はああわならないッ
自分で稼いで生きたいんだ!

そんな彼女が教えを乞うのが
かつて天使を救った
ひとりの老女です
そこで伝えられた秘訣とは
大家稼業なのです

「投資はまず節約から始めましょう!」

格安スマホに乗り換えて
朝食はコンビニパンでなく
スーパーで買った食パンを焼きましょう
そして家賃の安い部屋にお引越しするんだ

大家族の末っ子ゆえ放置され
ちゃんと箸を持つことも出来ないし
挨拶すらままならないコミュ障の天使ちゃん
しかし自分を変えるために食らいつく

最初は気難しい老女でしたが
天使の生い立ちに同情して
じょじょに心を開き
やがて彼女の師となる過程が
無理なく描かれてゆきます

老人たちのアドバイスを
自分の血肉として
ちょっとずつ成長する
天使の姿が微笑ましい

そして天使は2人の母と決別し
自分のチカラで立つ決意をする
何も持たないものが
独力で生きる難しさと
喜びを描く物語でした

孤独な老人たちが集まるホテル
という設定が物悲しくも
ちょっと滑稽に書かれていて
不思議な魅力を醸しています

身勝手な実の母と同じように
子供に恨まれた老女の姿が
正反対の生き方をしたのにと
無常に感じました

世は無常
そこに違うアプローチながらも
なんとか生き抜こうとする
女性たちのしたたかさが
たくましいです

あなたは本当に自分の役に立つ
投資を
していますか?

作品紹介(出版社より)

埼玉県の大家族で育った日村天使(えんじぇる)は、生活保護を受け自堕落な生活を送ってきた。大家族ファミリーとしてテレビにも出ていたが、16歳で家を出て、大宮のキャバクラ「マヤカシ」に勤める。そこでビルのオーナー綾小路光子と知り合った。数年後、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルにひっそりと暮らす光子と再会する。天使は、投資家だという光子の指南で、生きるノウハウを学ぶことになるが……。

作品データ

タイトル:『老人ホテル』
著者:原田ひ香
出版社:光文社
発売日:2022/10/19

作家紹介

原田ひ香(はらだ・ひか)

1970年神奈川県生れ。
2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。
2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。
著書に『三千円の使いかた』『そのマンション、終の住処でいいですか?』『古本食堂』『一橋桐子の犯罪日記』『ランチ酒』『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』『人生オークション』『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』『ミチルさん、今日も上機嫌』『三人屋』『ラジオ・ガガガ』などがある。

原田ひ香の作品紹介

『はじまらないティータイム』(2008年1月)
『東京ロンダリング』(2011年7月)
『人生オークション』(2011年10月)
『母親ウエスタン』(2012年9月)
『アイビー・ハウス』(2013年3月)
『彼女の家計簿』(2014年1月)
『ミチルさん、今日も上機嫌』(2014年5月)
『三人屋』(2015年6月)
『ギリギリ』(2015年9月)
『復讐屋成海慶介の事件簿』(2015年11月)
『彼女たちが眠る家』(2016年6月)
『事故物件、いかがですか?』(2016年9月)
『ラジオ・ガガガ』(2017年5月)
『ランチ酒』(2017年11月)
『三千円の使いかた』(2018年4月)
『DRY』(2019年1月)
『そのマンション、終の住処でいいですか?』(2019年4月)
『ランチ酒 おかわり日和』(2019年7月)
『まずはこれ食べて』(2019年12月)
『口福のレシピ』(2020年8月)
『一橋桐子(76)の犯罪日記』(2020年11月)
『サンドの女 三人屋』(2021年2月)
『ランチ酒 今日もまんぷく』(2021年6月)
『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』(2021年9月)
『古本食堂』(2022年3月)
財布は踊る』(2022年7月)
老人ホテル』(2022年10月)


関連記事