【感想】『レーエンデ国物語 月と太陽』多崎礼|どの決断が間違いだったんだろうか?

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レーエンデ国物語 月と太陽|多崎礼

ケイチャン

ケイチャン

【2023年148冊目】

今回ご紹介する一冊は、

多崎礼 著

『レーエンデ国物語 月と太陽』です。

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【感想】「どの決断が間違いだったんだろうか?」

ファンタジー大河小説、第2作め

幼く小さい望みは
はかなく砕け散った
圧政の地、レーエンデで
戦う者たちを描く物語です

今、戦いの狼煙があがる

前作で法王庁軍に占拠されたレーエンデ
戦費のためなどと搾取され
先住民たちは苦しい生活が続いています
だが征服者とて1枚岩ではなかった

名家ダンブロシオ家が襲撃される
父母と使用人まで惨殺されるなか
まだ幼い次男のルチアーノは謎の
人物によってひそかに逃がされる
・・僕だけが助かった理由は、なに?

そんな彼を匿ったのは
ひなびた村の少女テッサ
だが彼女は天与の怪力無双で
レーエンデを開放する英雄となるのだ
・・私の夢はかわいいお嫁さんだったのに

少女と、さらに幼い少年の、愛と信念が
呪われた大地レーエンデを激しく揺さぶる
だがその結末は
あまりにも悲しいものでした

「どの決断が間違いだったんだろうか?」

虐げられた人を救うために
非道なおこないを正すために
あらゆる努力と犠牲をささげる
2人の姿が痛ましい

恋心にゆれるテッサちゃんが
可愛らしく微笑ましいが
やがて恋をあきらめて
信念に生きる姿に涙です
英雄にならなきゃ、いけなかったのか?

いっぽう一途にテッサを想う、ルチアーノくん
大人になろうと精一杯背伸びして努力する
優等生のかがみです
だけど、真に弱いものの心まで
読み切れなかった

その心の弱い者とは
兄と自分だったんだ

恋を捨て、信念に生き
英雄として死んだテッサ
夢が破れ、心が折れて
復讐の悪魔として生きたルチアーノ

くっきりと分かたれた結末に
いったいどの決断が間違いで
こうなってしまったのかと
唖然とする思いでした

ドラマチックな展開が
目まぐるしく巡る
極上のファンタジー小説
今宵の夢でレーエンデへと
訪れてしまいそうだ

作品紹介(出版社より)

異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。母を失った領主の娘・ユリアは、結婚と淑やかさのみを求める親族から逃げ出すように冒険の旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、やがて帰るべき場所を得た。時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。

作品データ

タイトル:『レーエンデ国物語 月と太陽』
著者:多崎礼
出版社:講談社
発売日:2023/8/9

作家紹介

多崎礼(たさき・れい)

2006 年、 『煌夜祭』 で第 2 回 C・NOVELS 大賞を受賞しデビュー。
著書に 『〈本の姫〉 は謳う』、『血と霧』シリーズなど。
2023年『レーエンデ国物語』第一~二巻を発売。

多崎礼の作品紹介

『“本の姫”は謳う』シリーズ
『夢の上』シリーズ
『血と霧 』シリーズ

『煌夜祭』 2013/5/25
『神殺しの救世主』 2015/07/01
『叡智の図書館と十の謎』  2019/02/22
レーエンデ国物語』2023/6/14
レーエンデ国物語 月と太陽』2023/8/9

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