現代

【本の感想】『給水塔から見た虹は』窪美澄|孤独が心を殺す

窪美澄『給水塔から見た虹は』
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年121冊目】

今回ご紹介する一冊は、

窪美澄 著

『給水塔から見た虹は』です。

【感想】「思い通りにならないのが、恋」

現代小説

この古い団地と学校は
私たちの『檻』なんだ
狭い世界で互いを苛む中学生が
広い世界を知る青春小説です

日本で生まれ育っても、外人なの?

母親との関係に悩む中学2年生の
2人の少女少年が主人公です
うまく行かないのは家庭だけじゃなく
学校でも無視されイジメられています

母親が外国人のボランティア活動に
夢中でいつも後回しにされるのが
桐乃(きりの)ちゃんです
・・私は大切じゃないの?

でもキミは日本人だろ

もっと深刻な問題を抱えるのが
ベトナム人のヒョウです
クラスメイトの会話についていけず
孤独な学校生活を送っている

そして家庭ではシングルマザーの
母にほったらかしにされ
食事にも事欠く始末です
・・どこにも僕の居場所はない

そんなヒョウの希望が
王様です
ベトナム人を救ってくれるという
彼は僕の父じゃないの?

ついにヒョウは王様=父に会うために
『高い煙突のある街』へと
この檻のような団地から
旅立つのだ

「孤独が心を殺す」

クラスメイトに無視されイジメられ
母親と分かり合えない2人の孤独が
胸に迫ります
誰とも話せず、どこにも居場所がない

仲間なら誰でもいいの?

そんなヒョウを受け入れてくれた
外国人不良少年たち
けどここでいいように使われて
搾取される姿が、悲しい

旅(家出)をしましょう

自らの運命を変えるために
見知らぬ街へと旅立つヒョウ
彼を追って家を出る桐乃ちゃん
運命に抗う2人に応援したくなる

また本作のテーマである
外国人問題にも考えさせられます

ボートピープル難民の苦労や技能実習生の劣悪な環境に心が痛みます

環境は何も変わらなかった
しかし一緒に旅して
同じ時間を過ごした2人は
心を通わすことが出来た

狭い檻の向こう側に
進む先の未来を見つける

少女少年の成長の姿に心が潤う青春小説でした

旅は人を成長させますね
あなたは学生の頃にどんな旅をしましたか?

作品紹介(出版社より)


あなたと私は違う。だから、一緒にいよう――。
『ふがいない僕は空を見た』『夜に星を放つ』の著者が、今を生きる人々に贈る感動作。

中学2年生の桐乃は、団地での暮らしに憂いていた。
郊外にある古い団地群には、様々な国にルーツを持つ人が生活している。そのせいか桐乃のクラスは衝突が絶えず、ベトナム人のクラスメイト・ヒュウがいじめの標的になっていたのだ。
家に帰っても、母の里穂は団地に住む人々を国籍問わず日夜助けており、「娘の私より、他人を優先するんだ」という思いがどうしても消えない。この場所で生活することに対する桐乃の嫌悪感は、日々強まっていく。
そんな中、中学校で起きたとある出来事をきっかけに、桐乃はヒュウと話すようになる。ヒュウは、理由は違えども、桐乃と全く同じことを望んでいた。
「この団地から出て、遠くに行きたい」と。

作品データ

タイトル:『給水塔から見た虹は』
著者:窪美澄
出版社:集英社
発売日:2025/7/4

作家紹介

窪美澄(くぼ・みすみ)

1965年東京生まれ。
2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。
受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。

窪美澄の作品紹介

『ふがいない僕は空を見た』(2010年7月)
『晴天の迷いクジラ』(2012年2月)
『クラウドクラスターを愛する方法』(短編集)
『アニバーサリー』(2013年3月)
『雨のなまえ』(短編集)(2013年10月)
『よるのふくらみ』(短編集)(2014年2月)
『水やりはいつも深夜だけど』(短編集)(2014年11月)
『さよなら、ニルヴァーナ』(2015年5月)
『アカガミ』(2016年4月)
『すみなれたからだで』(短編集)(2016年10月)
『やめるときも、すこやかなるときも』(2017年3月)
『じっと手を見る』(2018年4月)
『トリニティ』(2019年3月)
『いるいないみらい』(短編集)(2019年6月)
『たおやかに輪をえがいて』(2020年2月)
『私は女になりたい』(2020年9月)
『ははのれんあい』(2021年1月)
『朔が満ちる』(2021年7月)
朱より赤く: 高岡智照尼の生涯』(2022年1月)
夜に星を放つ』(2022/5/2)
夏日狂想』(2022/9/29)
タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』(2022/12/19)
ルミネッセンス』(2023/7/2)
ぼくは青くて透明で』2024/1/16
給水塔から見た虹は』2025/7/4

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ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
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