【感想】『パレードのシステム』高山羽根子|友人が自殺してしまった、私に出来ることはなかったのだろうか?

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パレードのシステム|高山羽根子

ケイチャン

ケイチャン

【2023年37冊目】
今回ご紹介する一冊は、
高山羽根子 著
『パレードのシステム』です。

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【感想】「友人が自殺してしまった、私に出来ることはなかったのだろうか?」

死から生を見つめる現代小説

死は忌むべきことなのか?
それとも
死は祝福なのか?
日本と台湾
異文化の死生観を対比させながら
生を見つめる物語です

沈鬱な雰囲気で始まる
おじいちゃんのお葬式から
物語はスタートします
その理由が
自殺だったから・・

血縁以外誰も参加しない
寂しすぎるお葬式
それは自死の罰なのか?
それほど死を選ぶのは
罪なのでしょうか?

そして物語は
主人公の私が
親友の自殺について
向き合っていく過程が
描かれていきます

「友人が自殺してしまった、私に出来ることはなかったのだろうか?」

友人の死に動揺し
目を背けてしまった主人公ですが
おじいちゃんの死には
向き合おうとします

台湾で生まれたおじいちゃん
まったく本を読まず
日記もメモも残さなかった
おじいちゃんはどんな人だったの?

そんな時主人公に
台湾でお葬式に参加する
機会が訪れます
行こう!おじいちゃんが生まれ
育った国に

そして語られる
台湾の死生観は
日本のものと全然
違ったのです

死は祝福

大勢の人に送り出される
お祭りのパレードのような
お葬式に胸のしこりがほどけて
ゆくような気持ちになり
物語は終わります

夢幻のようなストーリー展開に
人の理解には限界があり
わからないことだらけで
目隠しされて歩いているのが
世界の真実のようなイメージ
を受けました

人のことなど、わかるはずない

人の数だけ死生観があり
人は自分とは違うのだ
そんな気持ちになる
物語でした

作品紹介(出版社より)

鮮明で美しく、静謐かつ余韻に満ちたレクイエム、芥川賞作家の新境地。
人生はパレード、荘厳な魂の旅路。台湾と日本、統治と戦争の歴史に及ぶ記録と記憶の軌跡――。

祖父の自死をきっかけに実家のある地元に帰った美術家の私。祖父が日本の植民地だった戦前の台湾に生まれ育った「湾生」と呼ばれる子どもだったことを知り、日本統治下の台湾について調べ、知人からも話を聞き、誘われるまま台湾を訪れることになる。祖父の自死の原因、理由を探り、自身のルーツ・アイデンティティを確かめるための台湾訪問だが、何かに導かれるように台湾先住民の系譜にある人物の葬儀に参加することになる。日本とは全く違う儀式や儀礼、風景に触れるうち、戦争や生と死・祖父の思い出・美大時代唯一の友人の死、様々なイメージが想起され喚起されていくのだった。

作品データ

タイトル:『パレードのシステム』
著者:高山羽根子
出版社:講談社
発売日:2023/1/26

作家紹介

高山羽根子(たかやま・はねこ)


1975年富山県生れ。
2010年「うどん キツネつきの」で創元SF短編賞佳作受賞。
2016年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞を受賞。
2020年「首里の馬」で芥川龍之介賞を受賞。

高山羽根子の作品紹介

『うどん キツネつきの 』(2014/11/28)
『オブジェクタム』(2018/08/07)
『居た場所』(2019/01/17)
『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』(2019/07/18)
『如何様 (イカサマ)』(2019/12/06)
『暗闇にレンズ』(2020/09/30)
パレードのシステム 』(1989/10/01)

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