【感想】『君が手にするはずだった黄金について』小川哲|手につかめるものは少なく、手に持てるものは、さらに少ない

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君が手にするはずだった黄金について|小川哲

ケイチャン

ケイチャン

【2024年21冊目】
今回ご紹介する一冊は、
小川哲
『君が手にするはずだった黄金について』です。

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【感想】「手につかめるものは少なく、手に持てるものは、さらに少ない」

現代小説

あなたが手にしたかったものは
ホントは、なーに?
今の時代と、自分を見つめる
真摯な物語です

虚像のイイネ♪が、そんなにほしいの?

東京大学卒業の小説家が主人公の
(作者の小川哲も東大卒)
連作短編集です

中堅の小説家として
認められつつある、僕
物語は小説家の僕が
ふと過去を振り返ったり
知人や友人と交流するなかで
気付く、違和感について
深掘りしてようすが描かれる

その気付きとは
嘘を求められる時、
都合の悪いことを忘れる記憶の改変、
職業としての演技、
虚像の成功、
まるパクリの成功、
どれもこの時代を映す
鏡のような事象でした

「手につかめるものは少なく、手に持てるものは、さらに少ない」

めんどくさい、主人公の僕
些細なことが気になり
納得するまで調べずにいられない
自分しか大切なものがなく
他人と距離をとりたがる

めんどくさい・・友達にしたくないタイプです

始めの2編で女の子に振られるわけです笑

しかしそれは、自分に真摯な裏返しでもある

めんどくさい自分を自覚しつつも
いったいあの出来事はなんだったのか?
他にやりようはなかったのだろうか?
そして相手は何を考えていたのだろうか?

くよくよグチグチと考え込んで
思考の深みにはまり込んでゆく
からみ合った糸をほどいて
真実を探すようでした

この令和時代の・・
成功って、なに?
そして有名になるとか
人気者になるとかって
そんなに大切なの?
と問いかけてきます

SNSにあふれるキラキラした生活
でもその裏には
『病』と呼んでいいものが
潜んでいるのかも知れません

承認欲求という、病気です

イイね♪をたくさんもらえたら
たしかに嬉しいものですが
その過程にも意味がある
嘘や見栄では
真実のイイね♪と思えないんだ

たったひとつでいい
自分の大切な人から
真実のイイね♪がもらえるような
人生を送りたいものですね

作品紹介(出版社より)

認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!

作品データ

タイトル:『君が手にするはずだった黄金について』
著者:小川哲
出版社:新潮社
発売日:2023/10/18

作家紹介

小川哲(おがわ・さとし)

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。
2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。2017年『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。
2019年『嘘と正典』で第162回直木三十五賞候補となる。

小川哲 の作品

『ユートロニカのこちら側』 2015/11/20
『ゲームの王国 上・下 』 2017/08/24
『嘘と正典』  2019/09/19
地図と拳』  2022/06/24
君のクイズ』  2022/10/07
君が手にするはずだった黄金について』2023/10/18

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