【本の感想】『彼女たちの牙と舌』矢樹純|嘘を重ねて、やり過ごせるの?

【2025年112冊目】
今回ご紹介する一冊は、
矢樹純 著
『彼女たちの牙と舌』です。
【感想】「嘘を重ねて、やり過ごせるの?」
中学受験のママ友グループが
闇バイトの一味になっちゃった!?
一般家庭が闇落ちする
特殊詐欺小説です
高層階のタワーマンションで催される
ママ友たちのランチ会ですが
依織(いおり)さんの心は弾みません
・・私なんか場違いなんだ
元読者モデルでインフルエンサーの
澄佳(すみか)さんの主催者ですが
その豪華な部屋と豊かな生活の様子に
圧倒され自らの差に羞恥を覚えてしまう
思いに沈む依織だが、帰り道に看護師の
知絵(ともえ)さんから相談を受ける
・・私、大変なことになっているの
それは安易に行った闇バイトのことでした
晴れやかなランチ会では
みんな仮面を被っていました
ママ友4人はそれぞれトラブルを
抱えていたが黙っていたんだ
さて物語は知絵の告白から
一気に闇落ちします
・・なんとかなるさ♪
と始めた闇バイトだが
案の定、トラブルとなる
トラブルをおおやけにしまいと
嘘とその場しのぎでやり過ごす
だがそうは問屋が卸さない
もがくほどに深みにハマる
泥沼状態となってしまう
しかしここで逆転が始まる
もはやこれまでと腹をくくった
4人がそれぞれトラブルを
自ら暴露するんです
え!離婚してたの?
まあ!不倫があったの?
と、まあ出るわ出るわの
家庭問題大噴出です
全てを吐き出した4人はもう
ママ友を超えた関係となる
運命共同体となった女たちの
特殊詐欺グループへの逆襲に
スカッとしました
ママ友の複雑な人間関係が
特殊詐欺にハマッたことで
真の友人となる本作

闇から光を迎えた終幕に
ホッと胸をなで下ろしました

やっぱり人間関係は本音を伝えなきゃですね!
あなたにはそんな友達がいますか?
作品紹介(出版社より)
母親4人が語り合うのは、
中学受験対策と犯罪計画!?年代も仕事も家庭環境も異なる母親4人が出会ったのは、進学塾の保護者説明会だった。それをきっかけに、定期的に集うようになるが、ある日、詐欺事件に巻き込まれ……。笑顔の裏に隠された噓、嫉妬、後悔、嫌悪。敵は詐欺グループか、それとも笑顔のママ友か。
二転三転では、物足りない。
章が変わるごとに、見ていた世界が
反転する、驚きの長編ミステリー!
作品データ
タイトル:『彼女たちの牙と舌』
著者:矢樹純
出版社:幻冬舎
発売日:2025/5/28
作家紹介
矢樹純(やぎ・じゅん)
1976年青森県青森市出身。弘前大学人文学科卒業。
実の妹とコンビを組み『加藤山羊』の合同ペンネームで、2002年スピリッツ増刊(小学館)にてデビュー。2012年、第10回「このミステリーがすごい!」大賞に応募した長編ミステリーが《隠し玉》に選ばれ、『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』(宝島社)で小説家デビュー。
第10回「このミステリーがすごい!」大賞《隠し玉》(『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』受賞。
第73回日本推理作家協会賞短編部門(短編「夫の骨」/『夫の骨』所収)受賞。
第5回書評家・細谷正充賞(『マザー・マーダー』)受賞。
矢樹純の作品
『Sのための覚え書き かごめ荘殺人事件』2012/8
『がらくた少女と人喰い煙突』2017/9/6
『夫の骨』2019/4/12
『妻は忘れない』2020/10/28
『マザー・マーダー』2025/1/9
『残星を抱く』2022/7/12
『不知火判事の比類なき被告人質問』2022/10/20
『幸せの国殺人事件』2023/9/13
『血腐れ』2024/10/29
『撮ってはいけない家』2024/11/13
『或る集落の●』2025/7/16
『彼女たちの牙と舌』2025/5/28

