【感想】久坂部羊『R.I.P.安らかに眠れ』 |死の尊厳とは?

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R.I.P.安らかに眠れ|久坂部羊

ケイチャン

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【2022年30冊目】

今回ご紹介する一冊は、

久坂部羊 著

『R.I.P.安らかに眠れ』 です。

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【感想】「死の尊厳とは?」

サスペンス&ミステリー

お兄ちゃんが人を殺しちゃった!
優しかった兄がなぜ?どうして!

犯罪者家族となった妹の薫子は
兄の起こした殺人事件を追う
それは自分と価値観が全く異なる
死に対する考えを巡る旅となった

「死の尊厳とは?」

3人の男女を殺した事件
それは自死を望む人を殺してあげたという
自殺幇助と言うべきものだった

物語は何故自殺を望んだのか
3人の背景が語られます

彼氏に振られた女性
もともと自己肯定感が低く
生きづらさから度々リストカットするなど
希死念慮がありました

初めての恋に破れたのが
最後の決め手となり
死を望む

難病の男性
じょじょに体が動かなくなる難病
いずれ寝たきりとなる運命に絶望します
なによりも愛する妻に負担をかけるのが辛い

自分の運命よりも
妻の未来のために
動けるうちに死ぬことを決意する

生まれついて死を望む青年
恵まれた芸術的才能を持ちながらも
均質であることを迫り
同調圧力が強い世の中になじめない

彼にとって死はなんでもないこと
今たまたま生きてるが
死んだってどうってことない
未練なくこの世を去る

死を肯定的にとらえる3人ですが
いわゆる世間はそれを理解しません
もっとも否定的なのは
主人公である、薫子です

僕は序盤からこの主人公の薫子が
どうにも好きになれませんでした

自分の意見が正しいと思っていて
相手を思いやるようでいて
実は世間の空気に合わせているだけ
浅慮で想像力に欠ける
普通の人・・

途中で気が付きました
薫子とは、今の日本人のアバターなのだと
自分が普通で正しく当たり前と思う
無邪気で無慈悲なマジョリティーを
主人公に据えたのです

自分には理解出来ないことで苦しむ人・・
それを自分の価値観で判断することは
無意味だけでなく有害です

マジョリティーが普通であると考える価値観を
それは本当に正しいんですか?
と疑問を投げかけています

あなたは大切な人の気持ちを
本当に理解していますか?

作品紹介(出版社より)

優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。

作品データ

タイトル:『R.I.P.安らかに眠れ』
著者:久坂部羊
出版社:講談社
発売日:2021/11/26

作家紹介

久坂部羊(くさかべ・よう)

1955(昭和30)年大阪府生れ。大阪大学医学部卒。
外科医、麻酔科医を経て、外務省に入省。在外公館にて医務官を務めた。
2003(平成15)年、『廃用身』で作家デビュー。
2014年、『悪医』で日本医療小説大賞を受賞。
他に『破裂』『無痛』『神の手』『嗤う名医』『芥川症』『老父よ、帰れ』『オカシナ記念病院』『怖い患者』『生かさず、殺さず』などの著書がある。『ブラック・ジャックは遠かった』『カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座』などエッセイも手がけている。

久坂部羊の作品紹介

『廃用身』(2003年5月)
『破裂』(2004年11月)
『無痛』(2006年4月)
『糾弾– まず石を投げよ』(2008年11月)
『神の手』(2010年5月)
『第五番– 無痛2』(2012年2月)
『悪医』(2013年11月)
『嗤う名医』(2014年2月)
『芥川症』(2014年6月)
『告知』(いつかあなたも)(2014年9月)
『虚栄』(2015年9月)
『反社会品』(2016年8月)
『老乱』(2016年11月)
『テロリストの処方』(2017年2月)
『院長選挙』(2017年8月)
『カネと共に去りぬ』(2017年11月)
『祝葬』(2018年2月)
『介護士K』(2018年11月)
『老父よ、帰れ』(2019年8月)
『オカシナ記念病院』(2019年12月)
『黒医』(2019年12月)
『怖い患者』(2020年4月)
『生かさず、殺さず』(2020年6月)
『善医の罪』(2020年10月)
『MR』(2021年4月)
R.I.P 安らかに眠れ』(2021年11月)

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