【感想】『少女を埋める』桜庭一樹|埋められても立ち上がる女であれ!

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少女を埋める|桜庭一樹

ケイチャン

ケイチャン

【2022年31冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桜庭一樹 著

『少女を埋める』です。

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【感想】「埋められても立ち上がる女であれ!」

淡いピンクの装丁とタイトルから
美少女が主人公の耽美な物語かなと
読んでみたら・・全く違いました笑

埋められても立ち上がる女性の物語です

3つの短編からなる著者の自伝的小説

まず最初の『少女を埋める』の冒頭で
人柱の話が語られます
この作品のテーマを暗示する内容です
いわく・・橋や堤防を守るために埋められる人柱は
よそ者や共同体の異端者である・・と

現状維持が最優先の共同体は
価値観の合わないもの
異なる意見を持つものを
爪弾きにする
それが正しいかどうかは問題ではないのです

「埋められても立ち上がる女であれ!」

異なる意見は無かったことにされる
人柱のように

ここまで読んでいても
僕にはちょっとピンと来ませんでした
そんな因習的なのイマドキあるのかなあと
そこで気がつきました

ああ、それは僕が男であるからだ・・と

食事は女が作るもの
後片付けも女がするもの
ついでに掃除もやっとけや!

年配の方はこんな考えの人も
まだいることでしょう

良いほうの半分を
自然と取っていってしまう
そんな男性が支配する世界
そのことを意識していない男が多すぎる

次の『キメラ』も考えさせられる内容です

『少女を埋める』についての書評が新聞に掲載された
しかしそれは作中に書かれていないことを
恣意的に曲解された内容でした

母が父を虐待していた、と

そんなこと書いていない
どうしよう?
地元の母が叩かれてしまう!

ここから新聞社と評論家を相手に
間違いを訂正させる戦いが始まります
巨大な新聞社と男性優位な評論家村の住民に
冬子さんの声は届くのか?

コロナ禍で社会が変革するなか
いまだ根強く残るジェンダー差別
作者の体験をもとにして、今を描く物語です

よし!僕は今日、仕事から帰ったら
ご飯を作って洗い物をして
ついでに掃除もしておこう
愛する妻の笑顔のために笑

作品紹介(出版社より)

2021年2月、7年ぶりに声を聞く母からの電話で父の危篤を知らされた小説家の「わたし」は、最期を看取るために、コロナ禍下の鳥取に帰省する。なぜ、わたしの家族は解体したのだろうか?――長年のわだかまりを抱えながら母を支えて父を弔う日々を通じて、わたしは母と父のあいだに確実にあった愛情に初めて気づく。しかし、故郷には長くは留まれない。そう、ここは「りこうに生まれてしまった」少女にとっては、複雑で難しい、因習的な不文律に縛られた土地だ。異端分子として、何度地中に埋められようとしても、理屈と正論を命綱になんとかして穴から這い上がり続けた少女は東京に逃れ、そこで小説家になったのだ――。
「文學界」掲載時から話題を呼んだ自伝的小説「少女を埋める」と、発表後の激動の日々を描いた続篇「キメラ」、書き下ろし「夏の終わり」の3篇を収録。
近しい人間の死を経験したことのあるすべての読者の心にそっと語りかけると同時に、「出ていけ、もしくは従え」と迫る理不尽な共同体に抗う「少女」たちに切実に寄り添う、希望の小説。

作品データ

タイトル:『少女を埋める』
著者:桜庭一樹
出版社:文藝春秋
発売日:2022/1/25

作家紹介

桜庭一樹(さくらば・かずき)


1999年小説家デビュー。
2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞受賞
2008年『私の男』で直木賞受賞。
作品に『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『少女には向かない職業』『荒野』『ファミリーポートレイト』『伏 贋作・里見八犬伝』『無花果とムーン』、『GOSICK』シリーズなどがある。

桜庭一樹の作品紹介

『ロンリネス・ガーティアン AD2015隔離都市(1999年12月)
『ルナティック・ドリーマー(2001年12月)
『Girl’s Guard 君の歌は僕の歌(2002年1月)
『B-EDGE AGE 獅子たちはアリスの庭で(2002年7月)
『竹田くんの恋人(2002年9月)
『B-EDGE AGE 獅子たちはノアの方舟で(2002年11月)
『赤×ピンク(2003年1月)
『GOSICK -ゴシック-』(2003年12月)
『推定少女』(2004年9月)
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』(2004年11月)
『荒野』(2005年5月)
『推定少女』(2004年9月)
『少女には向かない職業』(2005年9月)
『ブルースカイ』(2005年10月)
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』(2006年6月)
『青年のための読書クラブ』(2007年6月)
『赤朽葉家の伝説』(2006年12月)
『私の男』(2007年10月)
『ファミリーポートレイト』(2008年11月)
『製鉄天使』(2009年10月)
『道徳という名の少年』(2010年4月)
『伏 贋作・里見八犬伝』(2010年11月)
『ばらばら死体の夜』(2011年5月)
『傷痕』(2012年1月)
『無花果とムーン』(2012年10月)
『このたびはとんだことで 桜庭一樹奇譚集』(2013年6月)
『ほんとうの花を見せにきた』(2014年9月)
『じごくゆきっ』(2017年6月)
『すきなひと 恋の絵本』(2019年5月)
『桜庭一樹のシネマ桜吹雪』(2021年1月)
『東京ディストピア日記』(2021年4月)
少女を埋める』(2022年1月)

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