【感想】『彼女が言わなかったすべてのこと』桜庭一樹 |会えないけれど繋がっている

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桜庭一樹『彼女が言わなかったすべてのこと』

ケイチャン

ケイチャン

【2023年90冊目】
今回ご紹介する一冊は、
桜庭一樹 著
『彼女が言わなかったすべてのこと』です。

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【感想】「会えないけれど繋がっている」

パラレルワールドストーリー

通り魔の事件現場で再会した中川君は
別の世界の中川君なの?
コロナ禍のない世界線を生きる
もう1つの東京の物語です

小さなしこりが人生を曲げる

キラキラした女性を殺したかった!
と話した通り魔は
波間(なみま)ちゃんをスルーして
別の女性を刺したのだ

通り魔の青年は気付いていたのか?
波間ちゃんは乳がんの闘病者だったんです

この事件現場で
偶然再会した大学の同級生の中川くん
え、ちょっと待って!
中川君って人気漫画家なんだよ?

事件現場で怯え震える波間ちゃんに
着ていたビジネススーツの上着を貸し
LINEアドレスを交換して別れる中川くん
そして交差した時間軸は
また別の世界線へと別れるのでした

コロナ禍のない東京

ほどなく気が付く2人
僕たち、私たちは、別の世界にいる!
そうです、波間ちゃんがいる世界は
ロシアのお騒がせ女性デュオや
若手天才俳優のいない世界でした

やがて決定的な区別が起こる
それがコロナウイルス感染症でした

「会えないけれど繋がっている」

乳がんによって
人生が変わってしまった波間ちゃん
苦しい放射線治療や
病への恐れで性格すら変わってしまう

そんな波間ちゃんを
懸命に支えるのが
ちょっと乱暴な、兄と
常に寄り添う親友の、楓さんでした

私には全てを晒しても
支えてくれる人がいる・・

いっぽうパラレルワールドの中川くん
コロナ禍で世界が変わってしまった
外出を禁じられ
マスクを強要される
別世界となる

自分が変わってしまった波間ちゃんと
世界が変わってしまった中川くん
2人を繋ぐのはLINEです
でも何故か中川くんには
乳がんのことを言えないんだ・・

病によって変ってしまった自分と
世界との違和感を描く本作
弱者とされる波間さんに
どう接するのが正解なのか
分からなくなってしまいました

でもこうも思う

分からないのは当然である、と

そもそも他人なんて
なんだか分からないもの
弱者だって決めつけることなく
1人の人間として
向き合うことが大切なのかも
知れません

変化することは
恐ろしいことですが
繋がっている人がいることで
救われることもあるのでしょう

アフターコロナで変転する
世界の渦中にある今
人との繋がりがより一層
大切になってくるようです

あなたにはもしもの時に
かけつけてくれる
そんな人がいますか?

作品紹介(出版社より)

小林波間、32歳、先日偶然再会した大学の同級生中川くんと、どうやら別の東京を生きている。向こうの世界では世界規模の感染症が広がり――NEW桜庭ワールドに魅了される傑作長編!

作品データ

タイトル:『彼女が言わなかったすべてのこと』
著者:桜庭一樹
出版社:河出書房新社
発売日:2023/5/29

作家紹介

桜庭一樹(さくらば・かずき)


1999年小説家デビュー。
2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞受賞
2008年『私の男』で直木賞受賞。
作品に『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『少女には向かない職業』『荒野』『ファミリーポートレイト』『伏 贋作・里見八犬伝』『無花果とムーン』、『GOSICK』シリーズなどがある。

桜庭一樹の作品紹介

『ロンリネス・ガーティアン AD2015隔離都市(1999年12月)
『ルナティック・ドリーマー(2001年12月)
『Girl’s Guard 君の歌は僕の歌(2002年1月)
『B-EDGE AGE 獅子たちはアリスの庭で(2002年7月)
『竹田くんの恋人(2002年9月)
『B-EDGE AGE 獅子たちはノアの方舟で(2002年11月)
『赤×ピンク(2003年1月)
『GOSICK -ゴシック-』(2003年12月)
『推定少女』(2004年9月)
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』(2004年11月)
『荒野』(2005年5月)
『推定少女』(2004年9月)
『少女には向かない職業』(2005年9月)
『ブルースカイ』(2005年10月)
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』(2006年6月)
『青年のための読書クラブ』(2007年6月)
『赤朽葉家の伝説』(2006年12月)
『私の男』(2007年10月)
『ファミリーポートレイト』(2008年11月)
『製鉄天使』(2009年10月)
『道徳という名の少年』(2010年4月)
『伏 贋作・里見八犬伝』(2010年11月)
『ばらばら死体の夜』(2011年5月)
『傷痕』(2012年1月)
『無花果とムーン』(2012年10月)
『このたびはとんだことで 桜庭一樹奇譚集』(2013年6月)
『ほんとうの花を見せにきた』(2014年9月)
『じごくゆきっ』(2017年6月)
『すきなひと 恋の絵本』(2019年5月)
『桜庭一樹のシネマ桜吹雪』(2021年1月)
『東京ディストピア日記』(2021年4月)
少女を埋める』(2022年1月)
紅だ!』(2022年7月)
彼女が言わなかったすべてのこと』2023/5/29