直木賞候補

【本の感想】『踊りつかれて』塩田武士|みんな誰かの大切な人

塩田武士『踊りつかれて』
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年111冊目】

今回ご紹介する一冊は、

塩田武士 著

『踊りつかれて』です。

【感想】「みんな誰かの大切な人」

第173回 直木賞候補作

SNSで誹謗中傷した者は
報いを受ければいい!
匿名スナイパーの是非を問う
社会派小説です

言論の自由って悪口を言うことじゃないよね?

SNSの誹謗中傷に耐えかねて
命を絶つ・・
そんなニュースが珍しくない社会って
やっぱりおかしいですよね

芸能人は1つの失敗が命取り

不倫を暴かれて、メチャクチャに叩かれた
お笑い芸人の天童ショージは死を選んだ
でもそれは死をもって贖うほどの罪なのか?
そしてメチャクチャ叩いた匿名スナイパーに
罪はないのか?

匿名のバリアを剥がしてやる

天童ショージを誹謗中傷した
83人の氏名・住所・職業が晒された
名誉毀損で訴えられた告発者の
元音楽プロデューサーを守るため
弁護士は彼の過去を探るのだった

告発者は何のために
そして何を思ってこの事件を起こしたのだろうか・・

「みんな誰かの大切な人」

物語は告発者の瀬尾の弁護士である
久代奏(くしろ かなで)さんの
視点で進みます
多くを語らない依頼人、だからこそ
知らなくちゃいけないんだ

メチャクチャした週刊誌

瀬尾はもう1人、若くして引退した
歌手の奥田美月(おくだ みつき)
にデタラメな記事を書き追い詰めた
記者を告発します

メチャクチャが許された時代

嘘でもなんでも、売れたら勝ち!
そんな週刊誌が流行った時代がありました
けど嘘でもなんでも、バズったら勝ち!
こんな現代のSNSが、時代を後追いしているようです

実は愛を描いた本作

物語は登場人物の背景を丁寧に描き
炎上に晒された有名人の家族・友人
関係者の思いを綴ります
悲しみや無念に、心が痛みます

愛する人を、叩けますか?

人は誰しも、誰かの大切な人
そう思えば、おいそれと
誹謗中傷なんて出来ないよね?
みんな想像力を働かそうよ!

さて炎上を描いた本作ですが
エンディングは美しく
愛のカタチを描いて終わります

心が潤う素敵な終幕でした

社会派作家が世に一石を投じる
人を殺すSNSの物語

そろそろインターネット社会も
穏やかで知的な交流の場になっていい頃ですよね

あなたは想像力を持って
SNSをしていますか?

作品紹介(出版社より)

第173回直木賞候補作! 傑作社会派小説

 首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にもう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
 ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
 言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
 彼らを追いつめたもの、それは――。

* * *

■宣戦布告■

よく聞け、匿名性で武装した卑怯者ども。

SNSなんてなくなればいいのにな。えっ、ダメ? 余計なこと言うなって? そうだよなぁ。やっとおまえら権力者になれたもんな。炎上させて誰かが何かを諦めたときに、社会を変えてやったと実感できるもんな。そうやって表面的な正義感で研いだナイフで、悪意の塊でつくった毒で世直ししてるもんな。

やっぱり俺は週刊誌とおまえたちを赦せない。
だからやってやるよ。俺には俺の、ケジメのつけ方ってもんがあるんだよ。

これから重罪認定した八十三人の氏名、年齢、住所、会社、学校、判明した個人情報の全てを公開していく。
八十三なんて数字は氷山の一角に過ぎない。だが、図に乗ってると、次はおまえの番になるから肝に銘じておけ。

明日にはおまえたちの人生はめちゃくちゃになっている。
奥田美月や天童ショージのように。
せめて今日を楽しめ。あばよ。 

目次

序章  宣戦布告
第一章 加/被害者たち
第二章 依頼
第三章 宵山に生まれて
第四章 東京
第五章 テレビ
第六章 公判
第七章 B面の夢
第八章 弁護士
第九章 独白
終章  踊りつかれて

作品データ

タイトル:『踊りつかれて』
著者:塩田武士
出版社:文藝春秋
発売日:2025/5/27

作家紹介

塩田 武士(しおた・たけし)

1979年、兵庫県生まれ。
神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。
2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。
2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。
2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。
2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

塩田 武士の作品紹介

『盤上のアルファ』(2011年1月)
『女神のタクト』(2011年10月)
『ともにがんばりましょう』(2012年7月)
『崩壊』(2013年5月)
『盤上に散る』(2014年3月)
『雪の香り』(2014年6月)
『氷の仮面』(2014年11月)
『拳に聞け!』(2015年8月)
『罪の声』(2016年8月)
『騙し絵の牙』(2017年8月)
『歪んだ波紋』(2018年8月)
デルタの羊』(2020年10月)
朱色の化身』(2022年3月)
存在のすべてを』(2023年9月)
踊りつかれて

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ABOUT ME
ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
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