【感想】『踏切の幽霊』高野和明|あの列車に乗ったら、安らかな日々に戻れるだろうか?

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踏切の幽霊|高野和明

ケイチャン

ケイチャン

【2023年43冊目】
今回ご紹介する一冊は、
高野和明
『踏切の幽霊』です。

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【感想】「あの列車に乗ったら、安らかな日々に戻れるだろうか?」

幽霊小説

踏切の真ん中に立つ人の姿に
列車の運転手は急ブレーキをかける
・・間に合わないッ!
しかし確実に轢いたはずなのだが
誰もいないのだ
あれは・・幽霊なのか?

死んだように生きている

主人公の松田は妻を亡くし
後悔にかられています
激務で妻のための時間を
作ってやれなかった・・
こんな早く死ぬと分かっていたなら
もっと妻に尽くしていたのに
以来すっかり生気を無くしている

そんな松田に思いもしない
仕事が舞い込む
それが幽霊話の取材であった
え?幽霊なんているわけないでしょ!

しかし取材を続けるうちに
松田は気が付いてくる
この話は・・ガチだ
そして真夜中に電話が鳴るのだ
絶命時の叫びとともに

『あの列車に乗ったら、安らかな日々に戻れるだろうか?』

踏切の幽霊は誰なのだ?
正体不明の死者を追うが
もどかしいくらいに
手が届かない

緻密な取材の様子に
物語にのめり込める
そして少しずつ気力を取り戻す
松田の姿に熱くなります

そしてたどり着くのが
ひとりの笑わない女性の
不幸な生涯でした
・・これでは成仏出来るはずもない!

現実と心霊現象
2つの狭間を綱渡りするように
均衡を失わずにリアリティを持たす
ところが見事でした

そして幽霊になった女性と
松田の妻との対比が
幸不幸の残酷な差を
見せつけていました

死んだように生きている松田と
恨みで死にきれない幽霊
2人が邂逅するラストシーンに
ゾクゾクと背筋が震えます

あなたは幽霊を
見たことがありますか?

作品紹介(出版社より)

著者11年ぶりの最新作は、幽霊小説の決定版!

『ジェノサイド』の著者、11年ぶりの新作!

マスコミには決して書けないことがある――

都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。
同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。
雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、
やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。

1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、
読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版

作品データ

タイトル:『踏切の幽霊』
著者:高野和明
出版社:文藝春秋
発売日:2022/12/13

作家紹介

高野和明(たかの・かずあき)

1964年生まれ。映画監督・岡本喜八氏に師事し、映画・テレビの撮影スタッフを経て脚本家、小説家に。
2001年『13階段』で江戸川乱歩賞受賞。
2011年の『ジェノサイド』で山田風太郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。

高野和明 の作品

『13階段』 2001/08/01
『グレイヴディッガー』  2002/08/01
『K・Nの悲劇』 2003/02/01
『幽霊人命救助隊』 2004/04/07
『夢のカルテ』 2005/11/30
『6時間後に君は死ぬ』 2007/05/11
『ジェノサイド』 2011/03/30
踏切の幽霊』2022/12/13

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