【感想】『朱色の化身』塩田武士|彼女は何と戦い、何から逃げていたのか?

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朱色の化身|塩田武士

ケイチャン

ケイチャン

【2022年62冊目】

今回ご紹介する一冊は、

塩田武士 著

『朱色の化身』です。

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【感想】「彼女は何と戦い、何から逃げていたのか?」

彼女は何者だ?
昭和から令和へ、価値観が激動する時代を生きる
1人の才女をルポライター風に描く骨太のミステリーです

ひとりの人を知る・・
情報量が多く、多数に個人が埋没している今の時代
それは途轍もなく困難な事かもしれません

バラバラのピースからは、姿が見えてこない

父の依頼で一人の女性を追う、ライターの大路(おおじ)
しかし調べれば調べる程に、彼女の輪郭はぶれてゆく・・
辻珠緒!あなたはどんな人なんだ!

京都大学卒業の才媛
大手銀行に就職したのち
ゲームクリエイターとして成功
ゲーム依存症の友人の息子を救い
現在は・・行方不明

彼女を行方を探すため、彼女の過去を探る大路
それは高度経済成長期から今を結ぶ
ジェンダー差別に苦しむ女性の記憶でもあった

「彼女は何と戦い、何から逃げていたのか?」

実父の暴力と、義父の差別で
才能に恵まれたゆえに苦しむ、少女時代

大手銀行に総合職で採用されたものの
男尊女卑の会社で不遇を囲う、OL時代

寿退職で家庭に入るも義母と小姑にいびられ
アルコール依存症となる結婚生活

新しい生活が始まる度に
女性ゆえの苦しみが付きまとう

生来の生真面目さと努力で困難に立ち向かう珠緒さん
現状に屈するには優秀過ぎたのかもしれません

しかし、彼女には暗い影が付きまとう
新生活する度に訪れる、男
それは珠緒の母と祖母が犯した罪を暴こうとする
断罪の使者であった!

珠緒のキーパーソンとなる人々をインタビューするうちに
大路は珠緒の過去の秘密を知る事となる
それは時代と、そして男に翻弄された
3代に渡る女性たちの物語

綿密に巡らされたストーリー展開
ひとりの人間を立体的に描く重厚な手腕
塩田武士の気迫が伝わるようです
読み応え抜群でした

作品紹介(出版社より)

「知りたい」――それは罪なのか。
昭和・平成・令和を駆け抜ける。80万部突破『罪の声』を超える圧巻のリアリズム小説。

「聞きたい、彼女の声を」 「知られてはいけない、あの罪を」

ライターの大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒という女性に会えないかと依頼を受ける。一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚等を通じて取材を重ねる亨は、彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。作家デビュー十年を経た著者が、「実在」する情報をもとに丹念に紡いだ社会派ミステリーの到達点。

作品データ

タイトル:『朱色の化身』
著者:塩田武士
出版社:講談社
発売日:2022/3/16

作家紹介

塩田 武士(しおた・たけし)

1979年、兵庫県生まれ。
神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。
2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。
2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。
2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。
2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

塩田 武士の作品紹介

『盤上のアルファ』(2011年1月)
『女神のタクト』(2011年10月)
『ともにがんばりましょう』(2012年7月)
『崩壊』(2013年5月)
『盤上に散る』(2014年3月)
『雪の香り』(2014年6月)
『氷の仮面』(2014年11月)
『拳に聞け!』(2015年8月)
『罪の声』(2016年8月)
『騙し絵の牙』(2017年8月)
『歪んだ波紋』(2018年8月)
デルタの羊』(2020年10月)
朱色の化身』(2022年3月)

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