【感想】『存在のすべてを』塩田武士|真実は語られる時を待っていた

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存在のすべてを|塩田武士

ケイチャン

ケイチャン

【2024年4冊目】

今回ご紹介する一冊は、

塩田武士 著

『存在のすべてを』です。

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【感想】「真実は語られる時を待っていた」

誘拐ミステリー

誘拐され3年後に戻った男児は
何も語らなかった
誰かを守る沈黙の意味を探る
重厚なミステリーです

沈黙は破られる時を待っている

最近あまり誘拐事件って
聞かなくなりましたね
防犯カメラ、Nシステム
そしてスマホの普及によって
誘拐犯が難しくなったそうです
・・なるほどですね

時代は平成3年(1991年)
2つの誘拐事件が同時に起こる
もう警察の現場はてんやわんや
人が足りない、これは困った!

案の定、犯人を取り逃がし
人質はひとり、帰ってこなかった
身代金を盗られなかったの幸いだが
これはもう大失敗だ

しかし3年後
人質だった男の子、りょうくんは
ひょっこり健康に帰ってきたのだ
え、でもその間、誰と生活してたの?
でもりょうくんはそのことを
何一つ語らなったのでした

そして30年の時が過ぎ
時代は今、令和へと移る
事件当時の関係者が続々と
老境に入るなかでも
執念の捜査・取材を続ける者が
真実の扉をこじ開けるのだった

「真実は語られる時を待っていた」

重厚長大なストーリ展開が
魅力の塩田武士
本作もワクワクするような分厚さで
長編好きにはたまりませんでした

登場人物たちの作りこみも
厚く深いもので
それぞれの人生に
共感しつつ追体験してゆく

そして明かされた真実は
ゆるぎない『愛』でした

サイドストーリとして語られる
『絵画界の闇』に強烈な違和感を覚えます
う~ん、金で買う栄誉って
なんなんだ!?

不器用な生きざまが
哀しいのに
美しい
澄んだ冬の朝のような
胸打つラストシーンに
涙です

作品紹介(出版社より)

前代未聞「二児同時誘拐」の真相に至る「虚実」の迷宮!
真実を追求する記者、現実を描写する画家。
質感なき時代に「実」を見つめる者たち――
著者渾身の到達点、圧巻の結末に心打たれる最新作。

平成3(1991)年に神奈川県下で発生した「二児同時誘拐事件」から30年。当時警察担当だった大日新聞記者の門田は、令和3(2021)年の旧知の刑事の死をきっかけに、誘拐事件の被害男児の「今」を知る。彼は気鋭の画家・如月脩として脚光を浴びていたが、本事件最大の謎である「空白の三年」については固く口を閉ざしていた。
異様な展開を辿った事件の真実を求め、地を這うような取材を重ねた結果、ある写実画家の存在に行き当たるが――。
「週刊朝日」最後の連載にして、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。

作品データ

タイトル:『存在のすべてを』
著者:塩田武士
出版社:朝日新聞出版
発売日:2023/9/7

作家紹介

塩田 武士(しおた・たけし)

1979年、兵庫県生まれ。
神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。
2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。
2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。
2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。
2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

塩田 武士の作品紹介

『盤上のアルファ』(2011年1月)
『女神のタクト』(2011年10月)
『ともにがんばりましょう』(2012年7月)
『崩壊』(2013年5月)
『盤上に散る』(2014年3月)
『雪の香り』(2014年6月)
『氷の仮面』(2014年11月)
『拳に聞け!』(2015年8月)
『罪の声』(2016年8月)
『騙し絵の牙』(2017年8月)
『歪んだ波紋』(2018年8月)
デルタの羊』(2020年10月)
朱色の化身』(2022年3月)
存在のすべてを』(2023年9月)

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