【感想】『光のところにいてね』一穂ミチ|真の友人は出会った瞬間に分かる

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一穂ミチ『光のところにいてね』

ケイチャン

ケイチャン

【2023年65冊目】

今回ご紹介する一冊は、

一穂ミチ 著

『光のところにいてね』です。

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【感想】「真の友人は出会った瞬間に分かる」

恋愛小説

幼い友情は
永久の愛となる
何度別れても
また出会いなおす
2人を描く物語です

母に愛されない少女たち

物語は古びた団地から始まる
ここで待っているのよ・・
そう言い残して男の部屋に
消える母親・・
不穏な状況に怯える、結珠(ゆず)

そこに現れたのが
ぼっさぼさの長い髪に
ずた袋のような服を着た
みすぼらしい少女の、果遠(かのん)

医師の父を持ち
いくつもの習い事をし
私立小学校に通う
豊かな結珠ちゃん

対して

古い団地に住み
シングルマザーの母の信条で
化繊の服を着てはならず
お菓子もジュースも
給食すらダメとゆー
訳の分からないナチュラル生活の結果
周りからハブられている
貧乏な果遠ちゃん

本来出会うはずない2人ですが
強固な共通点がありました
それが・・
『母親から愛されていない』
でした

「真の友人は出会った瞬間に分かる」

みなさんも経験が
あるのではないでしょうか
一目見た瞬間に
ああ、コイツとは分かり合える
そう思える人がいる
あれって、何なんでしょうね笑

僕には高校と大学で1人づつおり
彼らは何年会っていなくとも
特別な友人だと思っています
まあ、相手がどう思っているかは
知らんけどね笑笑

さて古びた団地で出会った
結珠ちゃんと果遠ちゃんは
お互いに特別であると認識します
私たちは全然違うけど・・
同じなんだ。と

そして彼女たちの人生が始まる

小学時代の一瞬の邂逅を経て
高校でクラスメイトとなり
また別れ
お互いに結婚したのち
再び出会う

別れている時間のほうが
ずっと長い2人ですが
その間いつも自分の中に
相手がいます

想い合う2人の姿が
切ない

またそれぞれの家庭の事情が
2人に穏やかな時を与えない
再会に力を得た2人は
ついに自分の問題に
立ち向かっていくのでした

大人になって
母親と対決する結珠
自分の罪と向き合い
過去の清算をする果遠

2人の無情な運命が
ぐっと胸に迫ります

最後に選ぶのは、いばらの道か?

それぞれの家庭の事情を整理したら
次に向き合うのは、自分たちのこと
もう追いかけて欲しくないのに
追いかけて来てもらいたい!

ナイフで切りつけ
自分さえ切り裂くような
緊迫したラストシーンに
ハラハラドキドキでした

たとえ大切な者を
全て捨てても
さらに過酷な未来が
待っていると分かっていても

手を取り合って
一緒に生きていたい・・
そう思える相手がいるのって
不幸なのか?
幸せなのか?

悩ましい結末が
読後感を引く長編小説でした

あなたにも
別れていても大切な人が
いるんじゃありませんか?

作品紹介(出版社より)

一穂ミチ、最新長篇にして文句なしの最高傑作

第168回直木賞候補作&2023年本屋大賞第3位

――ほんの数回会った彼女が、人生の全部だった――

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

――二人が出会った、たった一つの運命
  切なくも美しい、四半世紀の物語――

作品データ

タイトル:『光のところにいてね』
著者:一穂ミチ
出版社:文藝春秋
発売日:2022/11/7

作家紹介

一穂 ミチ(いちほ・みち)

2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。
劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』など著作多数。
『スモールワールズ』(講談社)が、第165回直木賞候補、第12回山田風太郎賞候補となり注目を集める。同作収録の短編「ピクニック」は第74回日本推理作家協会賞短編部門候補となる。

一穂ミチの作品紹介

『雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか』(2008/7/10)
スモールワールズ』(2021/4/22)
パラソルでパラシュート』(2021/11/26)
砂嵐に星屑』(2022/2/9)
光のとこにいてね』 2022/11/07
『うたかたモザイク』 2023/03/29

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