【感想】『パラソルでパラシュート』一穂ミチ|ただ生きているだけでは許されない

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パラソルでシュート|一穂ミチ

ケイチャン

ケイチャン

【2022年10冊目】

今回ご紹介する一冊は、

一穂ミチ 著

『パラソルでパラシュート』です。

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【感想】「ただ生きているだけでは許されない」

30歳になったらクビ!
一流企業の受付嬢
華やかに見えるその境遇だが
それは期限付きのもの

受付嬢は若さと見栄えが命
29歳までに寿退社
30歳には出てってね~
なのだ

ぼおっとしている間に
29歳になった美雨
あと1年・・
さあ、崖っぷちだ!

そんな彼女が出合ったもの
それが
終わらない放課後を生きる
売れない芸人たちとの生活だった

「ただ生きているだけでは許されない」

男社会の犠牲者とも言える美雨
常に値踏みされる視線に晒され
短くなってゆく若さを
カウントダウンされる日々です

しかし
怒る気にも
焦る気にも
なれない

だって
したいことも
やりたいこと
ないのだから・・

受け身だが頑固な
美雨なのです

そんな時出合ったのが
売れない芸人たち
自分とは真逆
そこに惹かれる

そして始まった
芸人たちとのシェアハウス
終わらない放課後のような
わくわくする日々が始まる

会社のジェンダー差別
女性の生きづらさと
芸人たちの金はないが
突き抜けた自由さが
くっきりと対比します

しかし『時』への焦燥は変わらない
終わらない放課後のような生活
それは帰宅時間は自分で
決めなきゃいけないということ

夢を捨て
芸人を辞める仲間・・
その決断に美雨の心も
揺さぶられます

だけど楽しいシェアハウス
始まるようでなかなか進まない恋心
このぬるま湯にたゆたうような生活が
ずっと続いて欲しいと願うことでしょう

しかし、むろん
時は止まらない

今の世界の
ちょっとでも前に進め!
常にカイゼンせよ!
そして努力せよ!
みんなの期待に応えるために
というような圧力に

え!ちょっと私ついて行けません
それ、ダメですか?と異議を唱え

僕たちをただ生きているだけで
肯定してくれるような
登場人物全員が愛おしくなる
暖かで人間愛に満ちた物語です

あなたもきっと
そのままでいい

作品紹介(出版社より)

第165回直木賞ノミネートで話題をさらった『スモールワールズ』著者、感動の長編小説!「できること、やりたいこと」何もない――。大阪の一流企業の受付で契約社員として働く柳生美雨は、29歳になると同時に「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた。その記念すべき誕生日、雨の夜に出会ったのは売れないお笑い芸人の矢沢亨。掴みどころのない亨、その相方の弓彦、そして仲間の芸人たちとの交流を通して、退屈だった美雨の人生は、雨上がりの世界のように輝きはじめる。美雨と亨と弓彦の3人は、変てこな恋と友情を育てながら季節は巡り、やがてひとつの嵐が訪れ……。

作品データ

タイトル:『パラソルでパラシュート』
著者:一穂ミチ
出版社:講談社
発売日:2021/11/26

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作家紹介

一穂 ミチ(いちほ・みち)

2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。
劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』など著作多数。
『スモールワールズ』(講談社)が、第165回直木賞候補、第12回山田風太郎賞候補となり注目を集める。同作収録の短編「ピクニック」は第74回日本推理作家協会賞短編部門候補となる。

一穂ミチの作品紹介

『雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか』(2008/7/10)
スモールワールズ』(2021/4/22)
パラソルでパラシュート』(2021/11/26)

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