【感想】『スタッフロール』深緑野分|私の仕事を認める誰かが、きっといるんだ!

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スタッフロール |深緑野分

ケイチャン

ケイチャン

【2022年76冊目】

今回ご紹介する一冊は、

深緑野分 著

『スタッフロール』です。

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【感想】「私の仕事を認める誰かが、きっといるんだ!」

あなたは『好き』を仕事にしていますか?

本作は好きで仕方ないものを職業とした
映画の特殊効果を仕事とする2人の女性の
世代を超えた仕事への愛と苦悩の物語です

まず1人めの女性は1946年生まれのマチルダ・セジウィック
映画で特殊効果が使われ始めた黎明期に、特殊造形士として活躍します

第二次世界大戦後にアメリカに生まれたマチルダ
好景気に沸き、映画は大衆娯楽として大きく成長します
ハリウッドで働く父親の友人の影響で幼いうちから映画に親しむマチルダ
とくに特殊効果に大きな興味を持ちます、いつか私もこんなことをしたい!

大学卒業を待ちきれず、ニューヨークで造形師の弟子入りするマチルダ
修行の始まりです、無給で無休なとんだブラック職場ですが
『好き』は無敵、着実に腕を磨き、そして恋も始まる・・
しかし時代は若者の恋と女性の仕事にまだ厳しかった

ベトナム戦争で足を失うマチルダの恋人のチャールズ
失意の彼と新天地で出直すために向かった先はハリウッドです
憧れの映画の聖地で、特殊造形士・メイキャップアーティストとして
認められ、着実な仕事をするのだが・・何かもの足りない
私にはオリジナリティが無いのだ!

『猿の惑星』のエイプたち
『スターウォーズ』のストームトルーパー
そしてギーガーの『エイリアン』
1撃で時代を変えてしまうような才能の無さに苦しむ

そしてマチルダを変えてしまう、とんでもない技術が出てしまった
それがコンピュータグラフィックです
なんなんだ?このCGってヤツは
こんなのが出ては、私は要らないじゃないか!

聡明なマチルダはすぐにCGの可能性に気が付きます
そして自分の特殊造形の技術が、過去のものとなることを確信する
失意・絶望・怒り・・そして生まれたのがマチルダの最高傑作
臆病で卑屈そして怒りに震える異形の黒い犬『X(エックス)』だった
そしてマチルダは映画の世界から去り、再び戻ることはなかった

「私の仕事を認める誰かが、きっといるんだ!」

さて現代に飛びPart2の舞台は2017年のロンドン
2人めの主人公の女性は3Dアニメーターのヴィヴィアン・メリル
前年のアカデミー賞視覚効果部門を、惜しくも逃した
新進気鋭の才気あふるる、しかしプレッシャーに弱い女の子です

あと一歩でアカデミー賞を逃したヴィヴィ
それは深く彼女の心を打ちのめしていたのです
周りから次回こそはと期待されるのも、気が重いのに・・
ええッ?次の仕事は、あの伝説の怪獣X(エックス)が出る映画
レジェンド・オブ・ストレンジャーのリメイクだって!
そんなの過去作ファンに叩かれるに決まってるじゃないか

そう、マチルダが激情のままに作成したX(エックス)は
彼女の思惑を超え、映画監督のインスパイアを巻き起こして
伝説級の映画作品となり、多くのファンを獲得していたのです
名作のリメイクにはアンチがつきもの
SNSのアンチコメントにキリキリと胃が痛くなるヴィヴィ
私はちゃんとCGのX(エックス)を作ることが出来るの?

そして運命の糸は時代を越えて、この2人の女性を結びつける
映画の世界から去ったマチルダは、どう生きたのか
伝説の特殊造形のX(エックス)をヴィヴィはCGとして
リビルド出来るのでしょうか?

特殊効果の黎明期から今へと続く映画界の変遷も興味深い
確実に地位が向上した、女性の仕事の歴史も知れます
しかし変わらないのは、仕事への情熱です
機械的に動く組織の歯車だが、それだけではない
みなと共同して仕事をやり遂げる喜びを描いた
熱く生きる歯車である僕達を、祝福するような物語です

作品紹介(出版社より)

戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。
脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。
CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。

特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。

作品データ

タイトル:『スタッフロール』
著者:深緑野分
出版社:文藝春秋
発売日:2022/4/13

作家紹介

深緑野分(ふかみどり・のわき)

1983年神奈川県生まれ。
2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。
2013年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。
2015年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、2016年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。
2018年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、2019年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。
2019年刊行の『この本を盗む者は』で、2021年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

深緑野分の作品紹介

『オーブランの少女』(2013/10/22)
『戦場のコックたち』(2015/08/29)
『分かれ道ノストラダムス』(2016/09/21)
『ベルリンは晴れているか』(2018/09/26)
『この本を盗む者は』(2020/10/08)
『カミサマはそういない』(2021/09/24)
スタッフロール』(2022/04/13)

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