
ケイチャン
【2025年59冊目】
今回ご紹介する一冊は、
村田沙耶香 著
『世界99 上』 です。
もくじ
【感想】「人は皆、誰かの家畜なんだよ・・」
私は感情がない
ただ世界をトレースして生きるだけ・・
狂才、村田沙耶香が描く
狂った世界の物語です
過去の無い街、クリーン・タウン
平等で差別のないこの街で育つ
空子(そらこ)ちゃんの様子から
不気味なこの物語はスタートします
私には、私が、ない
意思がない、と言う空子ちゃん
ただ平穏無事に日々を過ごすため
周りの空気を読み、隣の人に合わす
ことのみに注力しています
そんなある時、父が情緒教育にと
愛玩動物のピョコルンを買ってくる
白い毛モフモフの愛らしい姿
・・どうだい?可愛いだろう!

ケイチャン
いや、なんかちょっと・・不気味だよ??

ケイチャン
今もっとも狂っている作家、村田沙耶香
今作はどんな世界を見せてくれるかと
期待して読み始めましたが・・
想像以上に、ぶち狂っていました笑
淡々と描かれてゆくのは
僕達が今生きる日本の姿です
狂っているのはこの物語なのか?
それともこの国の姿なのか?
いくつにも分断された世界
醜いマウント合戦と差別
まだまだ続く男尊女卑社会
そして全ての人が何かから
搾取されているんだ
私は家電なんだ
道具として使用される・・
そう言う空子ちゃん
・・そんなことないよって言いたいが
否定出来ないよ・・
物語は関係する人々の階層に合わせ
いくつもの世界を作り生きる様子と
妻と言う『家電』になって
夫に使用される日々が描かれる

ケイチャン
・・辛いよ
そして明かされるピョコルン
という愛玩動物の真実
・・ピョコルンになりたい
そう言う夫を置いて空子は
どこに向かうのか?
さらに狂っていく世界を予感しつつ
下巻に続くのです
作品紹介(出版社より)
この世はすべて、世界に媚びるための祭り。
性格のない人間・如月空子。
彼女の特技は、〈呼応〉と〈トレース〉を駆使し、コミュニティごとにふさわしい人格を作りあげること。「安全」と「楽ちん」だけを指標にキャラクターを使い分け、日々を生き延びてきた。
空子の生きる世界には、ピョコルンがいる。
ふわふわの白い毛、つぶらな黒い目、甘い鳴き声、どこをとってもかわいい生き物。
当初はペットに過ぎない存在だったが、やがて技術が進み、ピョコルンがとある能力を備えたことで、世の中は様相を変え始める。3年以上にわたる著者初の長期連載がついに書籍化。
村田沙耶香の現時点の全てが詰め込まれた、全世界待望のディストピア大長編!
作品データ
タイトル:『世界99 上』
著者:村田沙耶香
出版社:集英社
発売日:2025/3/5
作家紹介
村田 沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。
2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。
2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞受賞。
2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞受賞。
2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞。
著書に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』『変半身』『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。
村田沙耶香の作品紹介
『授乳』(2005年3月)
『マウス』(2008年3月)
『ギンイロノウタ』(2008年10月)
『星が吸う水』(2010年2月)
『ハコブネ』(2011年11月)
『タダイマトビラ』(2012年3月)
『しろいろの街の、その骨の体温の』(2012年9月)
『殺人出産』(2014年7月)
『消滅世界』(2015年12月)
『コンビニ人間』(2016年7月)
『地球星人』(2018年8月)
『生命式』(2019年10月)
『変半身(かわりみ)』(2019年11月)
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』(2020年2月)
『信仰』(2022年6月)
『世界99 上』2025/3/5