ケイチャン
【2024年138冊目】
今回ご紹介する一冊は、
阿野冠 著
『蛍の光 長州藩士維新血風録』です。
もくじ
【感想】「100年後の世界を見た青年」
誤った『天誅』で結ばれた
後の『工学の父』山尾庸三と
『初代総理大臣』伊藤博文を描く
明治維新の物語です
幕末の混乱期
篠突く冬の雨の夜
『天誅』と称する闇討ちをする
2人から物語はスタートします
激しく後悔する、庸三(ようぞう)
仕方ないよ運命だよ、となだめるのが
後の伊藤博文こと、俊輔(しゅんすけ)です
ずいぶんと性格の異なる2人だが
この1件で生涯の盟友となる
この時代に大混乱をもたらすのが
元、関ヶ原の西軍大将である
毛利家が率いる長州藩です
250年前の敗戦の恨みを
今こそ晴らすべき!
桂小五郎や高杉晋作らに
率いられて各地で倒幕に向けて
過激なテロ活動を行います
時代は今、革命前夜なのだ
そんな忙しい時期なのに、なんと
イギリス留学計画が立てられる
山尾庸三、伊藤俊輔(博文)他
のちに『長州五傑』と称えられる
若き志士たちが海を渡るのだ
主人公の庸三はずっと
天誅で殺してしまった
国学者のことを後悔する
あれは間違いだった・・
そして彼の意志を継ぐことを決意し
のちに聾啞学校を建設します
学者肌で勉強熱心な彼は
故国、長州潘の危機に
心を痛めながらも
ひたすらに西洋技術の
習得に努める
いっぽう高杉先輩の
舎弟を自認する俊輔は
イギリス留学を早々と終え
奇兵隊挙兵に参加する
各地を転戦しながら
持ち前の政治的才能を生かして
倒幕軍のバランサーとして
頭角をあらわしてゆく
のちの総理大臣の萌芽が
見られます
そして倒幕がなり
明治新政府が誕生する
新国家で要職に就く2人は
イギリス留学の経験を活かし
国家繁栄の基礎となります
ハルビン駅で凶弾に倒れる
伊藤博文の目に映ったのは
遠い昔、庸三と天誅を行った
自分自身の姿でした
イギリスから帰国する際に送別会で
演奏されたスコットランドの
民謡『オールド・ラング・サイン』
耳に残るその調べはやがて
日本語の歌詞を付けられる
それが表題の『蛍の光』です
ケイチャン
表題に繋がる物語の帰結に
一瞬の青春の光が
永遠に輝くように思えました
1人は勉学に励み
1人は戦場を駆けた
異なる2人の友情を描いた
青春小説でもある本作
ケイチャン
若い頃の苦労は
一生の宝となるのでしょう
あなたの宝物は
何ですか?
作品紹介(出版社より)
直木賞作家・今村翔吾氏ほか推薦!
維新の歴史は一閃の刃から始まった――
暗殺から始まる大逆転劇!
魂を揺さぶる書下し時代長篇「長州五傑」のメンバーとして明治政府草創期の中枢を担った
「工学の父」山尾庸三と「初代総理大臣」伊藤博文。
ふたりには墓場まで持っていくと誓った秘密があった――。高杉晋作の指揮のもと、英国公使館を焼き討ちし、尊攘の機運高まる長州藩。
一味に加わった山尾庸三は、書生部屋で同室の伊藤俊輔とともに、
孝明天皇の退位を説く幕府の御用学者・塙次郎を暗殺する。
だが断末魔の形相が夜ごとよみがえり、気鬱に陥る山尾。
最高幹部の桂小五郎の後押しで、のちに「長州五傑」と呼ばれる
五人のひとりとしてイギリスへ藩費留学することに。その中には相棒の伊藤もいた。
山尾の任務は『工業立国』の基盤を学ぶこと。だが彼の裡には、
己が殺めた塙次郎の遺志である障害者政策があった――。【目次】
第一章 冬の蛍
第二章 密偵の篠笛
第三章 祇園の夜
第四章 幻の奇兵隊
第五章 将軍の首
第六章 夕陽の波止場
第七章 万里の波濤
第八章 グラスゴーの歌
第九章 惜春の情
終 章 暗殺の森
作品データ
タイトル:『蛍の光 長州藩士維新血風録』
著者:阿野冠
出版社:徳間書店
発売日:2024/5/31
作家紹介
阿野冠(あの・かん)
1993年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。
芸能活動のかたわら、雑誌「小学四年生」に小説を連載し、14歳で作家デビュー。
2009年、初の単行本『ジョニー・ゲップを探して』を刊行。
2011年、阿野冠名義で『花丸リンネの推理』を刊行。
第23回・第24回・第25回松本清張賞最終候補。
その他の著書に『荒川乱歩の初恋 高校生探偵』『バタフライ』『君だけに愛を』がある。
阿野冠の作品
『ジョニー・ゲップを探して』
『花丸リンネの推理』2011/10/28
『谷根千少女探偵団 乙女稲荷と怪人青髭』2016/7/10
『荒川乱歩の初恋 高校生探偵』2018/9/11
『バタフライ』2018/12/18
『君だけに愛を』2020/9/18