【感想】『ともぐい』河﨑秋子|唯一の自信を奪われても、生きていけるのか?

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ともぐい|河﨑秋子

ケイチャン

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【2024年13冊目】

今回ご紹介する一冊は、

河﨑秋子 著

ともぐいです。

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【感想】「唯一の自信を奪われても、生きていけるのか?」

第170回 直木賞受賞作

山の獣でもなく
町でも生きられない俺は
半端な生き物なんだ
無様な姿が狂おしい物語です

手負いの獣とは俺のことだ

山にひとり生きる
そんなロマンある生活を
皆さんも都会に疲れた時
ちょっと憧れませんか?

山の暮らししか知らない
たくましい猟師の熊爪(くまづめ)
鹿や熊を狩り、肉や皮を売って
生活しています

町に行くのがわずらわしい
町の人から奇異の目で見られるのが
嫌いなんですね
プライドが高いのです

そんな熊爪さんが
大ケガを負ってしまう
肉を卸していた商家の
助けで命はとりとめるものの
もう以前のような猟は出来ません

俺は手負いの半端者になってしまった

手負いの獣になった熊爪は
自分と向き合い
自分の望みに気づく

それが
強敵である赤毛の熊と狩ることと
商家にいた盲目の女を
自分のものにすることでした

でもその2つの願いを叶えたとき
熊爪は幸せになれるのだろうか?

「唯一の自信を奪われても、生きていけるのか?」

生まれついての猟師である熊爪さん
山で生き生きと生活しています
俺は強いんだ!
そんな全能感にあふれている

いっぽう町に出れば
風呂に入らず臭い体臭と
みすぼらしい身なりが恥ずかしいし
人とどうコミュニケーションを
とってよいかわからず
オドオドしてしまう

そんな彼が大ケガを負い
プライドの源泉というべき
猟が思うように出来なくなります
・・これは辛いでしょう

悩み、嘆き、苦悩する熊爪の姿が
苦しい
人生の不条理に晒されるシーンに
ググっと物語に引き込まれます

そしてもうひとりの主人公といえる
盲目の女、陽子(はるこ)ちゃん
陽気で明るいその姿は、しかし
過酷な過去の裏返しでした

こんな2人がうまくいくはずない

朗らかなようで
森の冷気のような緊迫感が漂う
2人の生活の結末は
2頭の獣が争い合うようでした

いやあ
僕は陽子ちゃんが良かったですね
やはり女性はこれくらい
生きる力が強いほうが美しいです

プライドが失われて
生きる力を失う男と
プライドなぞ糞くらえと
生き抜く女の対比が
鮮やかでした

野性味があふれて
野臭にむせるような本作
男は獣になれないが
女は獣になれる
そんな感想を抱きました

作品紹介(出版社より)

明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!

作品データ

タイトル:『ともぐい』
著者:中野京子
出版社:新潮社
発売日:2023/11/20

作家紹介

河﨑秋子(かわさき・あきこ)

1979年北海道別海町生まれ。
2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。
2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で2015年度JRA賞馬事文化賞受賞。
2019年『肉弾』で第21回大藪春彦賞受賞。
2020年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。
他書に『鳩護』『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)『鯨の岬』『清浄島』などがある。

河﨑秋子の作品紹介

『颶風の王』2015/8/1
『肉弾』2017/10/6
『絞め殺しの樹』2021/12/1
『鯨の岬』2022/6/17
『介護者D』2022/9/7
『清浄島』2022/10/28
『土に贖う』2022/11/18
『鳩護』2023/7/7
ともぐい』2023/11/20

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