【感想】『燕は戻ってこない』桐野夏生|女に産まれて絶対に良かった!

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燕は戻ってこない|桐野夏生

ケイチャン

ケイチャン

【2022年55冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桐野夏生

『燕は戻ってこない』です。

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【感想】「女に産まれて絶対に良かった!」

現代の問題を鋭く切り取る社会小説

テーマは
女性の貧困と、代理母出産です

主人公は派遣労働者のリキ
北海道出身の29才、未婚彼氏なし
手取り14万で東京の1人暮らしは
もうカツカツです

同じ病院で派遣同僚のテルとの
ランチが寂しい・・
コンビニで買い物なんて贅沢は敵だ!
粗末な弁当に嘆息する毎日です

そこに転機が訪れる、それが・・
代理母出産であった
報酬額はなんと1,000万円!
困窮するリキはもう、ぐらぐらです

悩みに悩む、リキ
1千万円あれば生活を立て直すことが出来る
しかし、カネで知らない人の子を産めるのか?
子宮を売るようなことしちゃって、いいんだろうか?

そうです、1千万円という大金は
この感情と折り合いをつけること
込みの値段だったのです

いっぽう、リキに代理母出産を依頼した草桶(くさおけ)夫妻
元バレエダンサーの夫は、なんとかして自分の子を持ちたい
イラストレーターの妻は、ほぼ子供を諦めています
埋まらない溝があるまま、夫の熱意に引きずられる妻
波乱の予兆に夫婦生活は緊張してゆく

カネの魅力に抗えない・・
代理母出産を決意する、リキ
そして孕んだのは、誰が父親かわからない
男女の双子であった

「女に産まれて絶対に良かった!」

グルグルと目まぐるしく変化する、感情の描写
これが本作の魅力です
貧困のために、出産せざるを得ないリキ
激しく悩み、惑い、後悔します
その振れ幅が大きい

リキを取り巻く周囲の意見も、てんでばらばら
元派遣仲間のテルは赤貧の中、愛する人の子を産む
この対比が鮮やかです
依頼者の妻、悠子の感情も揺れに揺れる
他人に産ませた夫の子を、なんで私が育てなきゃなんないの?
私だけ、蚊帳の外じゃないか!

さらに悠子の友人である春画作家りりこが
トリックスター的役割を担い
物語の振れ幅を大きくします
黒い魔女のような容貌で、正論・暴論・奇論を吐き
代理母出産の問題点を、赤裸々に暴く
・・こういうキャラ、好きだな

だが出産を終え、リキがとった最後の行動で
全ての価値観がひっくり返るのです

実はリキが最強であった!

貧困、経済格差、男女差別・・そんなものは
子を産める女の前では敵ではなかったのです

皆さん、こう考えて下さい
私たちの全ての行為を突き詰めていくと
子供を産むことに帰結するのではないか、と
そう社会・経済・国家の全ての中心に
赤ちゃんがいるのです

僕も2児の父親だからよくわかる
母親には、絶対に敵わないと
母子の紐帯、母の子への愛情と献身は
男が女に敵うわけないのです

これがリキが最終的に行き着いた想いです
女に産まれて良かった
女って素晴らしい
だって子を産んだこの気持ちは
女しか味わえないのだから・・

最終の数ページで、これまでの価値観を
ぶっとばす、このカタルシス!
強烈なインパクトを与える読後感に
皆さんもしばし呆然となることでしょう

#桐野夏生#燕はさらてこない#読了#集英社 

作品紹介(出版社より)

この身体こそ、文明の最後の利器。

29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。

北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。

『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。

作品データ

タイトル:『燕は戻ってこない』
著者:桐野夏生
出版社:集英社
発売日:2022/3/4

作家紹介

桐野夏生(きりの・なつお)

1951年金沢市生まれ。
1993年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。
1998年『OUT』で日本推理作家協会賞受賞。
1999年『柔らかな頬』で直木賞受賞。
2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞受賞。
2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞受賞。
2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞受賞。
2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞受賞。
2009年『女神記』で紫式部文学賞受賞。
2010年、2011年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。
2015年には紫綬褒章を受章。
2021年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。
『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。

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桐野夏生の作品

『 熱い水のような砂 』 (1986年2月)
『 真昼のレイン 』 (1986年7月)
『 顔に降りかかる雨– ミロシリーズ1 』 (1993年9月)
『 天使に見捨てられた夜– ミロシリーズ2 』(1994年6月)
『 ファイアボール・ブルース 』(1995年1月)
『 OUT 』(1997年7月)
『 錆びる心 』(短編集)(1997年11月)
『 水の眠り 灰の夢– ミロシリーズ3 』(1998年10月)
『 ジオラマ 』(短編集)(1998年11月)
『 柔らかな頬 』(1999年4月)
『 ローズガーデン– ミロシリーズ4 』(短編集)(2000年6月)
『 光源 』 (2000年9月)
『 玉蘭 』 (2001年3月)
『 ファイアボール・ブルース2 』(短編集)(2001年8月)
『 ダーク– ミロシリーズ5 』(2002年10月)
『 リアルワールド 』(2003年2月)
『 グロテスク 』(2003年6月)
『 残虐記 』(2004年2月)
『 I’m sorry, mama. 』(2004年11月)
『 魂萌え! 』(2005年4月)
『 冒険の国 』(2005年10月)
『 アンボス・ムンドス– ふたつの世界 』(短編集)(2005年10月)
『 メタボラ 』(2007年5月)
『 はじめての文学 』(2007年8月)
『 東京島 』(2008年5月)
『 女神記 』(2008年11月)
『 IN 』(2009年5月)
『 ナニカアル 』(2010年2月)
『 優しいおとな 』(2010年9月)
『 ポリティコン 』(2011年2月)
『 緑の毒 』(2011年8月)
『 ハピネス 』(2013年2月)
『 だから荒野 』(2013年10月)
『 夜また夜の深い夜 』(2014年10月)
『 奴隷小説 』(短編集)(2015年1月)
『 抱く女 』(2015年6月)
『 バラカ 』(2016年2月)
『 猿の見る夢 』(2016年8月)
『 夜の谷を行く 』(2017年3月)
『 デンジャラス 』(2017年6月)
『 路上のX 』(2018年2月)
『 ロンリネス 』(2018年6月)
『 とめどなく囁く 』(2019年3月)
『 日没 』(2020年9月)
『 インドラネット 』(2021年5月)
砂に埋もれる犬 』(2021年10月)
『燕は戻ってこない』(2022年3月)

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