ケイチャン
【2022年17冊目】
今回ご紹介する一冊は、
川村元気 著
『神曲』です。
もくじ
【感想】「悲しみに心が潰れてしまう」
ありふれた日常、それは
かりそめなものなのかも知れません
そう、大海に浮いた板の上で生きていて
ちょっと波が高くなったら転覆してしまう
僕達が生きる世界とはそんなものなのかも
小学生の息子を送っていく
笑顔で学校の前で別れて
元気に走る姿を見ていたら
通り魔に刺されて死んでしまった・・
不意に消えてしまった日常に
家族の絆は壊れてしまう
子供を失った家族がたどり着いたのは
美しい歌を歌う宗教団体だった
子供を惨殺されて
壊れてしまった家族の
救済と再生の物語です
弱い、父
どこかぼうっとしていて
何事も他人事のように
当事者意識と主体性に欠ける
弱い人
頼りない父にイライラします
インチキ臭いセラピーに助けを求めたり
妻が望むから宗教を信じるふりをしたり
嫌なことを聞きたくないから
娘の話を聞かない
でも家庭が崩壊しつつあるのを
上手く取り纏める人なんて
どこにいるのでしょうか?
弱い、母
息子を失った衝撃に耐えきれず
宗教に救いを求め
自分の見たいものしか見ず
信じたいことしか信じない
弱い人
息子の死を正視出来ない
母の嘆きは悲痛です
心の痛みを忘れるために
盲目的に宗教にのめり込む母
それを責めるのは酷と言うものです
そして娘
頼りにならない父と
宗教にのめり込む母の間で
揺れ動きながら成長する
高校生になった彼女が
1人の青年に出会った時
家族の運命が動き出す・・
川村元気は弱い人を描くのが
とても上手いですね
過酷な運命にたやすく弄ばれる弱い人
そう、僕らのことです
魂の救済を求めて
あえぐようにもがく家族の姿を
優しく描く物語です
娘の成長
これこそ家族の救済であったように
僕は思えました
ラストで語られる神の姿に
あなたは何を思いますか?
作品紹介(出版社より)
小鳥店を営む檀野家の平穏な日常は、突然終わりを告げた。息子が通り魔事件で刺殺され、犯人は自殺。地獄に突き落とされた父、母、姉の三人が、悲しみと怒りを抱えながらも足搔き、辿り着いた先にあるものとは。次々に明かされる家族の秘密、ラスト20ページの戦慄、そして驚嘆の終曲(フィナーレ)。震えるほどの感動が待つ、著者渾身の飛躍作。
作品データ
タイトル:『神曲』
著者:川村元気
出版社:新潮社
発売日:2021/11/18
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作家紹介
川村 元気(かわむら・げんき)
1979年横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。
「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「君の名は。」などの映画を製作。
2011年、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。
2012年、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表し、同作は21カ国で出版された。
2018年、初監督作品『どちらを』がカンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に出品される。2021年、初の翻訳本『ぼく モグラ キツネ 馬』を刊行。他著に小説『億男』『四月になれば彼女は』『百花』、対話集『仕事』『理系』など。
川村 元気の作品紹介
『世界から猫が消えたなら』(2014/9/18)
『億男』(2018/3/9)
『四月になれば彼女は』(2019/7/10)
『百花』(2021/7/7)
『神曲』(2021/11/18)
■絵本
『ティニー ふうせんいぬ の ものがたり』(2013/11/1)
『ムーム』(2014/6/20)
『ふうせんいぬティニーのはじめてBABY 』(2014/12/5)
『パティシエのモンスター』(2015/5/23)
『ふうせんいぬティニー せかいいっしゅう!』(2015/10/9)
『ふうせんいぬティニー なんだかふしぎなきょうりゅうのくに!』(2017/7/15)
『マカロンのかいかた』 (2018/9/14)
■その他
『仕事。』(2018/9/4)
『超企画会議』(2016/4/21)
『理系。』(2020/9/2)
『ブレスト』(2019/6/14)