ケイチャン
【2024年33冊目】
今回ご紹介する一冊は、
加藤シゲアキ 著
『なれのはて』です。
もくじ
【感想】「その願いを叶えると、不幸になるぞ!」
『たった1枚の展覧会』のため
作者のイサム・イノマタを探る旅が
秋田の石油王一族の悲しい過去へと
繋がる物語です
求めた先に幸せがあるとは限らない
報道局からイベント事業部へ飛ばされた
テレビ局員、守谷(もりや)さん
手痛い失敗からの左遷で
メンタルはボロボロです
一緒にイベントやりましょうよ!
そんな彼にグイグイと
自らのイベント企画を持ってくるのが
70年代ファッションが浮きまくりの
吾妻(あづま)ちゃんです
でもこの絵、いいな・・
よし、やってやるか!
企画(案)『たった1枚の展覧会』
作者について調べ進めるうちに
持ち前の記者魂に火が付き
のめり込んでゆく、守谷さん
だが作者の関係者と思われる
大企業の猪俣石油化学(株)の
社長、猪俣輝(いのまた てる)の
態度が気になるんだ・・
一体何を隠し守ろうとしているんだ?
企画展を成功させるため
イサム・イノマタを探すため
秋田県に行く守谷と吾妻
それは第二次世界大戦に
運命を狂わされた
猪俣家の歴史をたどる
取材の旅となるのでした
本作のテーマは大きく
2つあります
1.願いを叶えること
2.家族との関係
政治家の不祥事を
暴こうとした、守谷さん
しかしその結果は悲惨なもので
左遷という大きな代償を払う
猪俣家の面々も
それぞれの願いがありましたが
それは叶わず
失意を味わいます
また家業から逃げて
自分の夢を追う、守谷さん
家業を継いだ弟に引け目を感じ
父母にも、合わす顔がないと
家族から遠ざかってしまう
猪俣家の面々も
兄弟関係、親子関係に悩み
想いはすれ違い、衝突し
結果、最悪の事態を迎えてしまう
なんでこうなった?
時代を越えてリンクする
登場人物たちの悩みが
ぐるぐると巡る
運命の輪のように感じました
けどラストシーンは
過去と現在が和解し
積年の悩みが
溶けてゆくようでした
現代と過去を繋ぐ
ヒューマンドラマを描く本作
いつの時代も人の悩みは
尽きないものなんでしょうね
骨太の物語でした
作品紹介(出版社より)
第170回直木賞候補作!
一枚の不思議な「絵」から始まる運命のミステリ。
生きるために描く。それが誰かの生きる意味になる。ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。
1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。
「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物のなれのはてだ」
作品データ
タイトル:『なれのはて』
著者:加藤シゲアキ
出版社:講談社
発売日:2023/10/25
作家紹介
加藤シゲアキ(かとう・しげあき)
1987(昭和62)年、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。
NEWSのメンバーとして活動しながら、2012(平成24)年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。
その後もアイドルと作家活動を両立させ、2021(令和3)年『オルタネート』で吉川英治文学新人賞、高校生直木賞を受賞。同作は直木賞候補にもなり話題を呼んだ。
他の小説作品に『閃光スクランブル』『Burn.―バーン―』『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってるAGE22・AGE32』、エッセイ集に『できることならスティードで』がある。
加藤シゲアキの作品紹介
『ピンクとグレー 』2012/01/28
『閃光スクランブル』 2013/02/26
『Burn.‐バーン‐』2014/03/21
『傘をもたない蟻たちは 』2015/06/01
『できることならスティードで』 2020/03/06
『オルタネート』 2020/11/19
『1と0と加藤シゲアキ』 2022/09/30
『チュベローズで待ってる AGE22』2022/06/27
『チュベローズで待ってる AGE32』2022/06/27
『なれのはて』2023/10/25