ケイチャン
【2023年71冊目】
今回ご紹介する一冊は、
津村記久子 著
『水車小屋のネネ』 です。
もくじ
【感想】「私たちは優しさで育つ」
もうお母さんには何も頼れないんだ
自分で生きることを決意した
18歳の理佐(りさ)
でも私はひとりじゃない
妹の律(りつ)がいるんだ
・・まだ8歳だけど
そして2人が向かった先に
水車小屋に住む
謎の話す鳥、ネネがいたんだ
母親に裏切られる
短大進学が決まっていた理佐ちゃん
けれど衝撃の電話が入る
入学金が振り込まれていません・・
なんと母は理佐の入学金を
交際相手の男に
貢いでしまったのです
裏切りはこれに留まらない
理佐の家に上がり込み
傍若無人に振る舞う男
そう、母は男を選び
姉妹を捨てていたのです
もうここにはいられない
家を出ることを決意し
理佐の就職先へ向かう2人
そこで待っていたのは
おしゃべりな鳥のネネと
やさしい人々でした
花には水を!
人には愛を!
人が成長するのに欠かせないのが
愛情です
理佐と妹はそれを
勤め先の夫婦や
近所の人々からの
親切として受ける
18歳の少女が懸命に生きる
その日その日をやり繰りする
姿に応援したくなります
理佐ちゃん、がんばって!
ギリギリの生活はやがて
有形無形の周囲の援助で
しだいに落ち着いてゆく
山間の村に住む人々の
素朴な優しさが染みます
そして物語は
10年周期とゆー
長い時間で姉妹を描く
それは優しさの輪廻
紡がれる親切の糸
緩やかに流れる
大河ドラマのようでした
おしゃべりな鳥
水車小屋に住むヨウムのネネ
ヨウムは鳥類で最も賢いと
される鳥なんですね
好奇心旺盛で
明るく親しみやすく
気遣いが出来き
そして仕事に熱心なネネ
ネネは私たちが理想とする
友人像のようでした
飛び去って欲しくないけど
自由に飛び立って欲しい
矛盾する人の心の象徴のよう
たくさんの優しさで
僕たちは支えられている
そしていつかこの恩を
他の人に返してあげたい・・
そんな気持ちになる
良いお話でした
あなたには用事がなくとも
立ち寄れる
そんな人が、いますか?
作品紹介(出版社より)
誰かに親切にしなきゃ、
人生は長く退屈なものですよ18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉
ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生――助け合い支え合う人々の
40年を描く長編小説毎日新聞夕刊で話題となった連載小説、待望の書籍化!
作品データ
タイトル:『水車小屋のネネ』
著者:津村記久子
出版社:毎日新聞出版
発売日:2023/3/2
作家紹介
津村 記久子(つむら・きくこ)
1978年大阪市生まれ。
2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。
2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞受賞。
2009年「ポトスライムの舟」で芥川賞受賞。
2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞受賞。
2013年「給水塔と亀」で川端康成文学賞受賞。
2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞受賞。
2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞受賞。
2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞受賞。
2020年「給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)」(ポリー・バートン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞。近著に『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』などがある。
津村 記久子の作品紹介
『君は永遠にそいつらより若い』 2005/11/01
『カソウスキの行方』2008/02/02
『ミュージック・ブレス・ユー!!』 2008/07/01
『婚礼、葬礼、その他 』2008/07/04
『アレグリアとは仕事はできない』 2008/12/09
『ポトスライムの舟』2009/02/05
『八番筋カウンシル』2009/02/20
『ワーカーズ・ダイジェスト』 2011/03/25
『まともな家の子供はいない』 2011/08/08
『とにかくうちに帰ります』 2012/02/29
『やりたいことは二度寝だけ』 2012/06/19
『ウエストウイング』 2012/11/07
『これからお祈りにいきます』 2013/06/28
『ポースケ』 2013/12/09
『エヴリシング・フロウズ』 2014/08/27
『二度寝とは、遠くにありて想うもの』 2015/04/08
『この世にたやすい仕事はない』 2015/10/01
『枕元の本棚』 2016/07/08
『浮遊霊ブラジル』 2016/10/24
『まぬけなこよみ』 2017/04/21
『ディス・イズ・ザ・デイ』 2018/06/07
『現代生活独習ノート』 2021/11/19
『水車小屋のネネ』2023/03/02