【感想】『夜の道標』c|失い続けても明日を生きねばならない

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夜の道標|芦沢央

ケイチャン

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【2023年4冊目】

今回ご紹介する一冊は、

芦沢央

『夜の道標』です。

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【感想】「失い続けても明日を生きねばならない」

損なわれ続ける魂は共鳴する
逃亡犯と当たり屋少年が出会うとき
閉ざされた部屋の扉は開くのだ
見捨てられた者たちのミステリーです

みなさんは逃亡生活を
想像してみたことはありますか?
監視力が発展した現在
誰にも見咎まれずに逃げおおすことは
難しいことでしょう

しかし2年間も逃亡する者がいる

それが地下に住む殺人犯の阿久津です
物語は阿久津を
かくまう女
追う刑事
それぞれの視点から
群像劇のように展開します

そしてもう一人の主人公とも言うべき
小6のバスケ少年、波留(はる)
父親の命令で当たり屋をしています
彼の苦しい生活の描写が痛々しい

そんな損なわれた2人が出会った時
魂が共鳴する

「失い続けても明日を生きねばならない」

時が静止したような
地下生活を続ける阿久津
それは死に続けているようなもの
きっかけを求めているのか

罪を清算することの

物語は阿久津が何故殺人を犯したのか
その理由が明らかになったときから
水路のつっかえが取れたように
急流のごとくクライマックスへと
突き進みます

茜色に暮れ行く表紙が
物語のイメージを表しています
黄昏時のようなストーリー展開

しかし朝を迎えるには
夜が来なくてはいけない
敢えて夜に進み出る
阿久津に心が切なくなります

やるせなさに心が震わせられる
染み入るような作品でした

作品紹介(出版社より)

あの手の指す方へ行けば間違いないと思っていた――。作家生活10周年記念、慟哭の長篇ミステリー。

作品データ

タイトル:『夜の道標』
著者:芦沢央
出版社:中央公論新社
発売日:2022/8/9

作家紹介

芦沢央(あしざわ・よう)

1984年東京生れ。千葉大学文学部卒業。
2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。
2016年『許されようとは思いません』で第38回吉川英治文学新人賞候補に。
2018年『火のないところに煙は』が第32回山本周五郎賞候補となり、第7回静岡書店大賞を受賞、さらに、第16回本屋大賞にノミネートされる。
2020年『汚れた手をそこで拭かない』が第164回直木賞候補、第42回吉川英治文学新人賞候補となる。
ほかの著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』などがある。

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芦沢央の作品紹介

『罪の余白』(2012年8月)
『悪いものが、来ませんように』(2013年8月)
『今だけのあの子』(2014年7月)
『いつかの人質』(2015年12月)
『許されようとは思いません』(2016年6月)
『雨利終活写真館』(2016年11月)
『貘の耳たぶ』(2017年4月)
『バック・ステージ』(2017年8月)
『火のないところに煙は』(2018年6月)
『カインは言わなかった』(2019年8月)
『僕の神さま』(2020年8月)
『汚れた手をそこで拭かない』(2020年9月)
『神の悪手』(2021年5月)
夜の道標』(2022年8月)

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