【感想】『極楽征夷大将軍』垣根涼介|2人だけだったあの頃にはもう戻れない

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極楽征夷大将軍 |垣根涼介

ケイチャン

ケイチャン

今回ご紹介する一冊は、

垣根涼介
『極楽征夷大将軍』 です。

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【感想】「2人だけだったあの頃にはもう戻れない」

歴史小説

庶子として不遇の幼少期を
過ごした足利兄弟が
時流に乗って天下を取る!
しかし平穏は訪れないんだ・・

乱世の武家の宿命を描く
兄弟と家臣の物語です

息詰まる鎌倉幕政の末期

北条家の独裁体制のなか
御家人随一の領土を誇る
足利家は目を付けられぬよう
息をひそめて生きていました

目を付けられ脅威と思われたら最後
謀略により家門を取り潰されてしまう
恐ろしい・・北条家!

そんな北条家に敢然と
立ち向かう者が出た
それが希代の梟雄で後世に
『王家の恥』とも言われる
後醍醐天皇でした

北条を討つべし!
後醍醐天皇の命により
天下は大乱となる

武家の棟梁として
大乱の海に漕ぎ出す
足利尊氏と弟の直義(ただよし)
そして2人を支える執事の
高師直(こうの もろなお)

この3人を中心に
室町幕府開闢の物語が進む

「2人だけだったあの頃にはもう戻れない」

さて前半は
負けて負けて、やっと勝って・・
てな感じで徐々に勢力を伸ばし
苦労の末、室町幕府を開くとゆー
サクセスストーリーです
読んでて楽しい♪

ところが後半は
次々と起こる一族の内乱
身内やかつての仲間と
血みどろの骨肉の争いが
描かれます
読んでて辛い涙

世間の波に乗る尊氏

幼い頃から
自分の考えがない
主体性がないと言われ
『頭陀袋』と揶揄された尊氏

対して
弟の直義と執事の師直は
一族を率いる強い責任感で
生き馬の目を抜く乱世を
智謀を尽くして尊氏を支えます

しかし後者2人の運命は過酷

荒波を泳ぎ切ろうとしたものの
力尽きて波に揉まれて沈むような
2人の最後です

脱力してただ水面に浮かぶうちに
自然と波に乗って気が付けば
岸に着いていたかのような
尊氏との違いが対比されています

我欲が身を亡ぼすのか?

敵との戦いが終わったら
恩賞の多可で味方同士が対立
派閥を作って争い出します

せっかく幕府が成立したのだから
みんなで仲良く幸せになったら?
と思ってしまいました

『一所懸命』の武士の生きざまは
ホント過酷だったんだなと
ゾッとしました
それとも・・戦が楽しくて
止められないのだろうか?

終わりなき戦いの波に
翻弄される武士を描いた物語
それは終わりなき消費欲を刺激される
現代になにか通じるようです

僕ももう少しチカラを抜いたならば
生きやすくなるのかな?
・・あなたはどう思いますか

作品紹介(出版社より)

史上最も無能な征夷大将軍

やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

作品データ

タイトル:『極楽征夷大将軍』
著者:垣根涼介
出版社:文藝春秋
発売日:2023/5/11

作家紹介

垣根涼介(かきね・りょうすけ)

1966年長崎県諫早市生れ。筑波大学卒業。
2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。
2004年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の3冠受賞に輝く。
2005年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。
その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』などがある。

垣根涼介の作品

『午前三時のルースター』 2000/04/01
『ヒートアイランド』 2001/07/01
『ワイルド・ソウル』 2003/08/01
『ギャングスター・レッスン』 2004/06/20
『サウダージ』 2004/08/05
『クレイジーヘヴン』 2004/12/01
『君たちに明日はない』 2005/04/01
『ゆりかごで眠れ』 2006/04/01
『真夏の島に咲く花は』 2006/10/13
『ヒートアイランド(1) (マンサンコミックス) 』2007/09/29
『ヒートアイランド(2) (マンサンコミックス)』 2007/10/29
『張り込み姫 君たちに明日はない』 3 2010/01/15
『ボーダー』 2010/04/26
『月は怒らない』 2011/06/03
『人生教習所』 2011/09/30
『勝ち逃げの女王: 君たちに明日はない』 4 2012/05/22
『光秀の定理 』2013/08/30
『迷子の王様: 君たちに明日はない5 』2014/05/22
『室町無頼 』2016/08/22
『信長の原理』 2018/08/31
涅槃 上』 2021/09/17
涅槃 下』 2021/09/17
極楽征夷大将軍』 2023/05/11

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