ケイチャン
【2022年95冊目】
今回ご紹介する一冊は、
櫛木理宇 著
『氷の致死量』です。
もくじ
【感想】「その優しさの代償はなに?」
聖母のような教師
全てを許し許容する
理想の母のような
2人の女教師と
彼女たちを取り合うようにもつれる
殺人者の物語です
この物語を特徴づけるのが主人公の女教師
鹿原十和子(かばら とわこ)です
生徒を引き付けて止まない魅力
それが聖母のような包容力でした
しかしその魅力は麻薬
十和子先生に理想を見出した生徒たちは
過剰な欲求を持つようになる
・・僕だけの先生になって欲しい、と
ところが十和子は聖母なんかではなかった
彼女はアセクシュアル(無性愛者)でした
性的欲求がない・・
既婚者の十和子は心から悩んでいました
恋愛が人生の最上階に置かれるようになったのはいつからでしょうか?
誰もがキラキラと輝く恋愛を夢見て
憧れることが当然のようになっています
わたしはそれに興味がないのだ
物語は十和子が自分の性的傾向を理解し
迷宮をさまようように悩み苦しみ
やがて受け入れる様子を描く
そして十和子と正反対の男
娼婦を解体する狂気のシリアルキラー
八木沼(やぎぬま)が付け狙うのだ
自分の欲求のためならば
いとも簡単に殺人の一線を越えてしまう
既に5人の女性の内臓の上を転がった
まごうなき快楽殺人者です
十和子の周辺をハイエナのようにうろつく八木沼
彼が言う『使命』のために
十和子は生贄になってしまうのでしょうか?
しかし作者はサイコスリラーの旗手、櫛木理宇
企みに満ちたミスリードの先で
思わぬ穴に落とされるような結末に
あなたもきっと驚くことでしょう
作品紹介(出版社より)
中学教師の十和子は自分に似ていたという女性教師が14年前に殺された事件に興味をもつ。彼女は自分と同じアセクシャル(無性愛者)かもしれないと……一方、街では殺人鬼・八木沼がまた一人犠牲者を解体していた。二人の運命が交錯するとき、驚愕の真実が!
作品データ
タイトル:『氷の致死量』
著者:櫛木理宇
出版社:早川書房
発売日:2022/5/10
作家紹介
櫛木 理宇(くしき・りう)
2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しデビュー。
同年『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞。
『ドリームダスト・モンスターズ』シリーズや、『死刑にいたる病』『209号室には知らない子供がいる』『鵜頭川村事件』『避雷針の夏』や『老い蜂』、映画化を控える『死刑にいたる病』など著書多数。
櫛木理宇の作品紹介
ホーンテッド・キャンパス
お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖(2014/02/20)
ドリームダスト・モンスターズ
チェインドッグ(2015/07/22)
赤と白(2015/12/22)
侵蝕 壊される家族の記録(2016/06/18)
僕とモナミと、春に会う(2016/12/06)
避雷針の夏(2017/07/20)
死刑にいたる病(2017/10/25)
アンハッピー・ウェディング 結婚の神様(2018/01/09)
瑕死物件 209号室のアオイ(2018/11/22)
少女葬(2019/05/01)
世界が赫(あか)に染まる日に(2019/09/20)
死んでもいい(2020/04/16)
虜囚の犬(2020/07/09)
殺人依存症(2020/10/07)
鵜頭川村事件(2020/11/10)
ぬるくゆるやかに流れる黒い川(2021/09/09)
老い蜂(2021/09/24)
残酷依存症(2022/04/07)
氷の致死量(2022/05/10)
虎を追う(2022/06/14)