ミステリー

【本の感想】『YABUNONAKA』金原ひとみ|戦わずに生きることなんて出来ないんだよ

金原ひとみ『YABUNONAKA』とピザ
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年83冊目】
今回ご紹介する一冊は、
金原ひとみ 著
『YABUNONAKA』です。

【感想】「戦わずに生きることなんて出来ないんだよ」

ハラスメント文学

熟成された怒りが、今
噴出する!
鬼才、金原ひとみが描く
性加害の告発を巡る群像劇です

現代社会は地雷原のようだ

枯れ切ったサラリーマンの木戸さん
かつてあった編集者としての
情熱はすっかりと冷めてしまい
50代半ばにして、働かないオジサン化です

そんな彼に過去が襲い掛かる

性的搾取をされていました!
と、告発する元・女子大学生
え!今さら?と思うのは加害者の常
ヤられた方は、ずっと忘れないのだ

と、そんな彼と彼女に
寄り添うに、かつ、俯瞰するように
係わるのが小説家の長岡友梨奈さんです

私は、ハラスメントと戦う!

ハラスメントする者は当然、悪
ハラスメントを黙認する者も、悪
悪人だらけの現代に1人たち向かう

長岡友梨奈の姿に、あなたは共感するのか?
それとも恐怖するのだろうか?

「戦わずに生きることなんて出来ないんだよ」

突き抜けるように生き急ぐ長岡友梨奈
そんな彼女と対照的なのが
編集者の木戸と五松です

とくに五松クンのクズっぷりが痛すぎます

男を責める、女たち

自覚のない加害者男性に
襲いかかる女性たち
沈黙の時は過ぎた
・・今こそ戦う時!

狂ったような戦いを挑む女性たちに
恐怖を感じます

さらに怖いのが長岡友梨奈さん
物語の後半からアクセルを踏み込み
続けるような暴走をしてしまう

急速に変わりゆく世界に
眩暈を覚えるが、それでも
この世界で生きるしかない

男女の垣根を越えて
ゆるやかに連帯して生きる

若い世代に希望を託すようなラストシーンが爽やかなのだ

今を生きる僕たちが読むべき1冊でした

作品紹介(出版社より)

文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇

性加害の告発が開けたパンドラの箱——

MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?
「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。

「変わりゆく世界を、共にサバイブしよう。」――金原ひとみ

文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ——。

性、権力、暴力、愛が渦巻く現代社会を描ききる圧巻の1000枚。
『蛇にピアス』から22年、金原ひとみの集大成にして最高傑作!

作品データ

タイトル:『YABUNONAKA』
著者:金原ひとみ
出版社:文藝春秋
発売日:2025/4/10

作家紹介

金原ひとみ(かねはら・ひとみ)

1983年東京生まれ。
2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。
2004年、同作で第130回芥川賞を受賞。ベストセラーとなり、各国で翻訳出版される。
2010年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。
2012年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。
2020年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。
2021年『アンソーシャル ディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。他『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『ミーツ・ザ・ワールド』等がある。

金原ひとみの作品紹介

『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』2008/10/31
『ハイドラ』2007/04/01
『憂鬱たち』2009/09/29
『マリアージュ・マリアージュ』2012/11/30
『軽薄』2016/02/26
『クラウドガール』2017/01/06
『星へ落ちる』2007/12/05
『オートフィクション』2006/07/05
『AMEBIC 2005/07/06』
『持たざる者』2015/04/24
『アッシュベイビー』2004/04/27
『TRIP TRAP トリップ・トラップ』2009/12/25
『fishy』2020/09/07
『パリの砂漠、東京の蜃気楼』2020/04/23
『マザーズ』2011/07/01
ミーツ・ザ・ワールド』2022/01/05
『アタラクシア』2019/05/24
『アンソーシャル ディスタンス』2021/05/26
デクリネゾン』2022/08/26
腹を空かせた勇者ども』2023/06/14
ハジケテマザレ』2023/10/5
ナチュラルボーンチキン』2024/10/3
YABUNONAKA』2025/4/10

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ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
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