2025.09.11 2025.11.17

【本の感想】『三毒狩り　上』東山彰良｜デタラメな政策に右往左往する庶民

ケイチャン（サカキケイ）

【2025年101冊目】

今回ご紹介する一冊は、

東山彰良著

『三毒狩り　上』です。

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【感想】「デタラメな政策に右往左往する庶民」

近代中国小説

反骨精神あふれる者は死ぬ！
日中戦争から続く大混乱の
中国に生きた人々を描く
エンタメ時代小説です

人の皮を被ったケダモノは、いる

主人公の佟雨龍（とう　うりゅう）が
18歳で死ぬことが冒頭で告げられます
そして時代は遡って、雨龍の父親が
いかにして逆恨みを受けるに至り
その結果どう死ぬかが描かれてゆく

男気あふれる、佟経漢（とう　けいかん）

雨龍の父、経漢が生まれた頃から
中国はずっと大混乱の真っただ中でした
日本に攻められ、国民党と共産党は内戦し
さてこの先どうなることやら・・

そんな中、経漢は胡麻油売りの帰り道
不良少年の襲撃を受けます
このチンピラ共を撃退した後
雷雨の中、１人の赤ちゃんを拾うのでした

もしや日本人の赤ちゃん？

村人たちの白眼視もなんのその
経漢はこの赤ん坊を育てる決意をする
そして時代は進み、日本は敗北し
国民党は内戦に敗れて台湾に逃げ
ついに共産党の１党独裁となるのだ

「デタラメな政策に右往左往する庶民」

共産党政権になり、農地解放され
小作人たちは大喜びでした
・・めでたしめでたし
とは、ならなかったのです

人民公社による、農地集約
大躍進政策の大失敗
そして百家斉放による
吊るし上げが始まります

思いつきのような政策に
庶民たちは振り回される
しかし佟（とう）一家らは
しぶとく生きるのだ

日本鬼子(リーベングイヅ)とからかわれ
育った雨龍は立派な悪ガキに成長します
それに輪をかけた悪童が血の繋がらない
姉の平平（ビンビン）ちゃんです

ケンカ友達の羅（ら）兄弟などと
思うざま悪ガキぶりを発揮する

姉弟が成長する姿が、笑えます

けど、人の皮を被ったケダモノがやってくる

共産党幹部の田沖（でんちゅう）
しかしその男はかつて経漢が
叩きのめしたチンピラだったのだ
・・この恨みはらさでおくべきか

父と母を殺され姉を汚された
雨龍が田沖を殺し、銃殺されたところで
上巻は終わります

さて、人を殺した悪人は
地獄に落ちると言われているのは
日本も中国も共通するところ

すなわち下巻は地獄からのスタートとなります

作品紹介（出版社より）

激動の中国大陸。
捨て子・佟雨龍の数奇な運命が拓かれるーー。

一度死んだ佟雨龍がふたたびこの現世へ舞い戻ってきたのは、甲辰の年（一九六四年）の十月十八日のことであった――。

舞台は、毛沢東率いる中国共産党が全権を握る中国山東省の吹牛村。捨て子の佟雨龍は、養父の佟継漢と養母の李秀媚の庇護のもと、姉の李平や犬の皮蛋（ピータン）とともに平和な少年時代を送る。そんなある日、共産党の青年幹部・田冲が村に赴任し、一家の暮らしにささやかな変化が訪れる。じつは、田冲は、養父の佟継漢と浅からぬ因縁があり、復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。

目次

第一部

１　佟家クロニクル

２　拳銃と皮蛋

３　生き埋めの王

４　怒りに体をあたえるな

５　革命的生産をめぐるあれやこれや

６　魂の成り立ち

７　せいぜい命ひとつの反右派闘争

８　皮蛋を食って飢饉を生きのびる

９　雨に殺され、雷に救われた少年

10　佟雨龍の誇り高くも哀れな死

作品データ

タイトル：『三毒狩り　上』
著者：東山彰良
出版社：毎日新聞出版
発売日：2025/7/22

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作家紹介

東山彰良（ひがしやま・あきら）

1968年台湾台北市生れ。9歳の時に家族で福岡県に移住。
2003年「このミステリーがすごい！」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。
2009年『路傍』で大藪春彦賞を受賞。
2015年『流』で直木賞を受賞。
2016年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。
2017年から2018年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で、織田作之助賞、読売文学賞、渡辺淳一文学賞を受賞する。
『夜汐』『どの口が愛を語るんだ』など著書多数。

東山彰良の作品紹介

『イッツ・オンリー・ロックンロール』（2007/7/1）
『路傍』（2008/2/26）
『ジョニー・ザ・ラビット』（2008/12/10）
『さようなら、ギャングランド』（2008/10/2）
『愛が噛みつく悪い星』（2009/5/12）
『ファミリー・レストラン』（2011/8/18）
『ライフ・ゴーズ・オン』（2013/3/14）
『流』（2015/5/13）
『ブラックライダー（上）』（2015/10/28）
『ブラックライダー（下）』（2015/10/28）
『ラブコメの法則』（2016/1/20）
『罪の終わり（2016/5/20）
『女の子のことばかり考えていたら、１年が経っていた。』（2017/11/22）
『夜汐』（2018/11/28）
『ありきたりの痛み』（2019/3/8）
『DEVIL’S　DOOR』（2019/6/19）
『越境』（2019/7/26）
『逃亡作法～TURD ON THE RUN～』（2019/11/12）
『小さな場所』（2019/11/14）
『恋々』（2020/9/4）
『怪物』（2022/1/31）
『三毒狩り　上』2025/7/22