【感想】『スピノザの診察室』夏川草介|人は死ぬ、必ず死ぬ、絶対に死ぬ

91 views
スピノザの診察室

ケイチャン

ケイチャン

【2024年66冊目】
今回ご紹介する一冊は、

夏川草介 著

『スピノザの診察室』です。

PR

【感想】「人は死ぬ、必ず死ぬ、絶対に死ぬ」

医療小説

本当に人のためになる医療って
なんなの?
冷酷で無慈悲な世界に生きる僕らの
祈りのような物語です

明日死すとも、今日を生きねばならない

京都のこぢんまりとした
病院で働く雄町哲郎(おまち てつろう)
チャリンコ通勤し、外来往診もする彼は
実は将来を嘱望された凄腕医師でした

大学病院で最先端医療を学び
数々の難しい手術をこなしていたが
亡き妹の息子を引き取ることになり
大学でのキャリアを捨てる決断をする

野に降りた天才、というかんじですね

物語は地域の人々と寄り添い
地道な仕事を続ける哲郎と
彼の実力を惜しむ大学病院の人
そして彼の患者の姿を描きながら
ホントの医療とは何かという
難しい問題を考えていきます

「人は死ぬ、必ず死ぬ、絶対に死ぬ」

死が医療の敗北であるなら
医者は必ず負ける運命にあります
だって人は死ぬ存在ですからね
大きな矛盾を抱えているわけです

そこで表題のスピノザの登場です

必敗が宿命である
残酷な世界に僕らは生きている
でも、だからこそ、
努力することに意義がある

人の生き死にと向き合う
哲郎たち医師の姿が
辛く、悲しいのに
美しく、魅力的です

つねに悩み、考えている
哲郎の真摯な姿には
暖かい共感を覚えます
だって僕らも生きる意義を
探している人間ですものね

おそらく正解などない
生きる意義を探る本書は
悟りを求めてさまよう
巡礼者を描いているようでした

けれど日々の生活には
輝ける瞬間がある

妹の遺児、龍之介との毎日
大好きな、お餅グルメを楽しむ瞬間
そして患者や同僚との交流
人の生きる意義は、ここにある・・

医療の過酷さと、けれど
そこにある喜びを描く
祈りのような物語でした
懸命に働く医師たちに
感謝の念がわきます

努力して生きるって
素晴らしいですね

作品紹介(出版社より)

現役医師として命と向き合い続けた著者が到達した、「人の幸せ」とは。
累計340万部のベストセラー『神様のカルテ』シリーズを凌駕する、新たな傑作の誕生!

その医師は、最期に希望の明かりをともす。

【あらすじ】雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

作品データ

タイトル:『スピノザの診察室』
著者:夏川草介
出版社:水鈴社
発売日:2023/10/27

作家紹介

夏川草介(なつかわ・そうすけ)

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県にて地域医療に従事。
2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書で2010年本屋大賞第2位、映画化もされた。
他の著著に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『本を守ろうとする猫の話』がある。

夏川草介の作品紹介

『神様のカルテ』2009/8/27
『神様のカルテ2』2010/9/28
『神様のカルテ3』2012/8/8
本を守ろうとする猫の話』2017/1/31
『新章 神様のカルテ』2019/1/31
『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』2019/11/28
『始まりの木』2020/9/25
『臨床の砦』2021/4/23
『レッドゾーン』2022/8/30
スピノザの診察室』2023/10/27
君を守ろうとする猫の話』2024/2/28

関連記事