ケイチャン
【2024年153冊目】
今回ご紹介する一冊は、
羽田圭介 著
『タブー・トラック』です。
もくじ
【感想】「自ら檻に入る人たち」
規則だらけの現代ニッポン
正しく賢く生きて行くには
自分を殺すしかないのか?
自主規制大国の行く末を占う
問題作です
誰もが好印象を抱く俳優
橘響梧(たちばな きょうご)さん
あれもダメこれもダメという
規制にがんじがらめで息苦しい毎日
王様の耳はロバの耳~~
と叫ぶ穴を、しかし彼は持っているんだ
それは巨大な、バン
艶消しのダークな塗装は逆に目を引き
フルスモークガラスの車内は
完璧な防音措置が施されています
このタブー・トラックで
思いのままに禁止用語を叫び
ストレス発散する
ここが彼の隠れ家なんです
物語は規則がまた新しい規制を作り
自由平等のための理想が
人々を縛る枷となってしまう
歪な現代を描いてゆくのだ
さまざまな人物たちが
ぞくぞくと登場する群像劇
みな現代の行き過ぎたルールに
疑問を覚えるも、逸脱はしない
1度失敗したらもう2度と
けっして許してもらえない
まるで地雷原を歩くような
不安な心持ちです
ケイチャン
戦前の相互監視社会を
自主的に復活させたような
この現代が
恐ろしい・・
だが物語は終盤で
唐突にその様相を変えます
*)注意!
以下ものすごいネタバレになります↓↓↓↓
なんと北海道にロシア軍が侵攻した
撃退し8年、混乱が続く中
響梧らはノシャップ岬で
ロシア軍の襲撃に遭うのだ
だが
必死で逃げる響梧たちの瞳は
生きる実感に満たされて
ギラギラと輝くのでした・・
平和で物質的に満たされていて
幸せなはずの現代では
心は死んでいたのに
死と隣り合わせの危険な
戦時である近未来では
心が生き生きと充実する
ケイチャン
なんて皮肉なんでしょう
あやふやなタブーを絶対視し
自ら檻に入って安心する
現代人を皮肉る本作
信じるに足るものなど、もう無い
ケイチャン
480ページのぶ厚さどおりの
重厚な物語に没入しました
自信を持ってオススメしたい
問題作です
ケイチャン
その規則は正しいのか・・
そんな事を考えることなく
盲目的に従い進む先に
明るい未来があると
あなたは信じられますか?
作品紹介(出版社より)
世間のルールや価値観に、生まれながらのスペックに、
DNAやホルモンに制限される人生を、思考停止で受け入れちゃいないか?芥川賞作家・羽田圭介が突き付ける問い。「その人生、自分の力で変えられますか?」
時代や場所が変われば変容するもの、アンコントロールな要素に左右される日常で、私たちは何を疑い、何を信じればいい――? 「タブー」蔓延る現代に放つ、衝撃の問題作!
【タブートラック】…改造車。世間の目を気にせず、禁忌を犯せるプライベートスペース。
世間が抱くクリーンなイメージを維持するために、押しつぶされそうになる俳優。
過去の失敗から、自らをコントロールすることに腐心する脚本家。
不祥事を起こした著名人をSNSで弾劾し、恵まれない人生の憂さ晴らしをする会社員。
親に黙って整形し、歌とビジュアルを武器に動画配信で荒稼ぎする女子高生。タブーに縛られ、タブーに魅せられた人生が交錯する先に現れたのは、「理想」の世界か、それとも――?
作品データ
タイトル:『タブー・トラック』
著者:羽田圭介
出版社:講談社
発売日:2024/8/22
作家紹介
羽田圭介(はだ・けいすけ)
1985年、東京都生まれ。
2003年、高校在学中の17歲時に「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞し、小説家デビュー。
明治大学商学部商学科卒。
2015年、「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞を受賞。
その他の著書に『走ル』『盗まれた顔』『メタモルフォシス』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『成功者K』『ポルシェ太郎』『Phantom』などがある。
羽田圭介の作品紹介
『黒冷水』(2005/11/1)
『不思議の国の男子』(2011/4/5)
『走ル』(2010/11/5)
『ミート・ザ・ビート』(2015/9/2)
『御不浄バトル』(2015/10/20)
『「ワタクシハ」』(2013/1/16)
『隠し事』(2016/2/8)
『盗まれた顔』(2014/10/9)
『メタモルフォシス』(2015/10/28)
『スクラップ・アンド・ビルド』(2018/5/10)
『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』(2018/11/15)
『成功者K』(2017/3/9)
『5時過ぎランチ』(2018/4/20)
『ポルシェ太郎』(2019/4/12)
『Phantom』(2021/7/14)
『滅私』(2021/11/30)
『タブー・トラック』2024/8/22