ケイチャン
【2023年70冊目】
今回ご紹介する一冊は、
村上龍 著
『ユーチューバー』 です。
もくじ
【感想】「人のセッ〇スなんて、どうでもいいな」
ある人気小説家が
YouTubeに出演し
赤裸々に女性体験を語る・・
夜のまま時が止まったような小説です
嫌なタイプの主人公
『世界一もてない男』を自称する
自称ユーチューバーの四十男なんですが
コイツが嫌な感じなんです
僕はこーゆー奴と関わりたくないのですが
何故か彼のYouTubeに出演することを
快諾する老作家の矢崎健介
僕の女性遍歴を語っていい?
こうして
現代のシェヘラザードのごとく
矢崎健介が付き合った
女性達のことが語られます
それは赤裸々な
性体験というよりは
女性の不可解さや
御しがたさを感じさせるもの
そう、女性こそ
謎・なんです!
老作家の矢崎健介のモデルは
作者の村上龍その人のようですね
わりあい過激な性描写をするタイプですが
本作は行為そのものの描写はほぼ無いので
安心して読めます
安心出来ないのはその裏に漂う
黒々とした雰囲気です
僕達は何が見たいのだろう?
さて作家の矢崎健介は
自由の人です
会社勤めをしたことがなく
人間の上下関係のピラミッドから
ひとり外れたスフィンクスのよう
対照的に『世界一もてない男』の
自称ユーチューバーは
コネ入社の会社から、嫌われて
つまはじきにされて自由業になった者です
自由の意味合いがぜんぜん違う
だからユーチューバーは
他人であるウクライナのゼレンスキーを語り
矢崎健介は
自分のことを語る
でも人って
究極的には
自分の事しか興味ないんですよね
実体験にもとずく矢崎健介(村上龍)
の話は含蓄に富み、実に面白い
しかし物語の後半は
作家、矢崎健介と
そのパートナー
30代か40代か50代に見える
謎の美女の
今の生活について描かれます
高級ホテルのスイートルームで
過ごす2人の生活は
空虚で何かを見失っているかの
ように感じました
様々な映画やYouTubeの
話題に次々と話しが飛ぶんですが
あまりに選択肢が多くて
自分が何を見たいのか
わからなくなっているみたい
まるで動画をザッピングしている
自分を見ているようでした
ザッピングに疲れて
TVを切ったあとの
黒々とした画面を見つめるような
読後感が残りました
朝になって仕事に出かける・・
それって実は幸せなのかもって
あなたもそう思いませんか?
作品紹介(出版社より)
自由 希望 そしてセックス。
「やらせてくれる女は大事だ」
若くしてデビューした大物作家、矢﨑健介70歳。
動画配信サイトで語るのは、炎上必至の男の哲学。
村上龍、最新長編小説!「雨の日、水色のレインコートが、僕の小汚いアパートの景色の中で際立っていたんです。それで、彼女は去っていったんです。」(本文より)
人気作家・矢﨑健介とその恋人。そして「世界一モテない」四十男が東京の高級ホテルで出会い、奇妙な交流が始まる。
男が矢﨑に懇願したのは、自ら手がけるユーチューブ番組への出演。
快諾した矢﨑が語るのは、誰にも明かさなかった女たちとの秘話だった。『限りなく透明に近いブルー』『コインロッカー・ベイビーズ』『半島を出よ』──
そして今、私たちの心を解放できるのは、村上龍ただ一人だ。
作品データ
タイトル:『ユーチューバー』
著者:村上龍
出版社:幻冬舎
発売日:2023/3/29
作家紹介
村上龍(むらかみ・りゅう)
1952)年、長崎県佐世保市生れ。武蔵野美術大学中退。
大学在学中の1976年『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。
1981年『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞受賞。
1998年『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞受賞。
2000年『共生虫』で谷崎潤一郎賞受賞。
2005年『半島を出よ』で毎日出版文化賞、野間文芸賞受賞。
2011年『歌うクジラ』で毎日芸術賞を受賞。
『愛と幻想のファシズム』『五分後の世界』『13歳のハローワーク』など著書多数。