ケイチャン
【2022年82冊目】
今回ご紹介する一冊は、
恒川光太郎 著
『化物園』です。
もくじ
【感想】「誰もが心のうちに化け物を飼っているんだ」
人を喰う化け物がいるんだ・・
冒頭の作品『猫どろぼう猫』がわりとコミカルな感じで
軽く読める系の短編集かと思いきや、読み進めるうちに
深度を増す世界観に溺れてゆく
まずケシヨウが何なのか、よくわからないんですね
人喰い化け猫として登場したのに
人になったり、トラになったり、神になったり
同一の者かもわからない、不気味な存在です
恒川光太郎が描くキャラクターは、凡庸のようであってしかし
あっさりと人を殺したりと、境界線を軽々と越えてしまう
一行後に何をしでかすか分からない、恐ろしさがあります
全く気を抜いて読めやしない、そんな緊迫感が魅力ですね
それは僕らが生きるこの世界の本質かもしれません
誰もが皆心の内に、恐ろしい怪物がいる
ある時ふっと制御不能となって、この現実を喰い破ってしまう
そんなことを思わすような、不穏で心を惹かれる物語です
最終話の『音楽の子供たち』は当初ファンタジー色の強い
ストーリー展開ですが、最後なんと・・現実に戻ってくるのです
僕達が確固たるものと信じているこの世界の境界線が
実はあやふやなものではないかと
あなたもそう思ってしまうのではないでしょうか?
作品紹介(出版社より)
「人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ」檻の中の醜悪な動物たち。その歪んだ欲望を、実力派作家・恒川光太郎が描く。
作品データ
タイトル:『化物園』
著者:恒川光太郎
出版社:中央公論新社
発売日:2022/5/23
作家紹介
恒川 光太郎(つねかわ・こうたろう)
1973年東京都生まれ。
2005年「夜市」で第12回日本ホラー小説大賞を受賞し、デビュー。同作は単行本化され、第134回直木三十五賞候補になる。
2014年『金色機械』で第67回日本推理作家協会賞を受賞。
他の著作に『雷の季節の終わりに』『草祭』『秋の牢獄』『竜が最後に帰る場所』『無貌の神』『滅びの園』などがある。
恒川 光太郎 の作品紹介
夜市(2005年10月)
雷の季節の終わりに(2006年10月)
秋の牢獄(2007年10月)
草祭(2008年11月)
南の子供が夜いくところ(2010年2月)
竜が最後に帰る場所(2010年9月)
異神千夜(金色の獣、彼方に向かう)(2011年11月)
ゆうれいのまち(2012年2月)
月夜の島渡り(私はフーイー)(2012年11月)
金色機械(2013年10月)
スタープレイヤー(2014年8月)
ヘブンメイカー– スタープレイヤー2(2015年11月)
無貌の神(2017年1月)
滅びの園(2018年5月)
白昼夢の森の少女(2019年4月)
真夜中のたずねびと(2020年9月)
化物園(2022年5月)
箱庭の巡礼者たち(2022年7月)