ケイチャン
今回ご紹介する一冊は、
垣根涼介 著
『涅槃』 下巻 です。
もくじ
【感想】「全知を使い、我が家を守る!」
備前の戦国武将、宇喜多直家の物語です
上巻で20万石程度まで
その勢力を高めた直家
しかし未だその国力は
自立するにはギリギリであり
東に織田家、西に毛利家と
巨大国家の狭間で呻吟します
しかし、戦国時代とは
ホント激動ですね!
織田家の興隆に
対決を選んだ
直家と同程度の勢力を持つ
松永弾正と荒木村重
さんざん考えぬいた末に
謀反を選んだ2人ですが
結果は無残な敗北
敗者は全てを失うのが
戦国の習い
必死に守っていたものを
全て失う時、人は何を思うのでしょうか
直家もさんざん苦悩したのち
・・選択します
それはぎりちょんの選択
あと少し遅ければ
もう間に合わない
絶妙な判断でした
そして迎える、死
暖かな布団で
愛する人に看取られる死は
謀略の限りを尽くした武士には
最善と言えるでしょう
その5ヶ月後には
直家を苦しめた信長が
本能寺で横死し
20年後
関ヶ原で西軍に与した宇喜多家は
敗戦で全てを失う
無常の世の変転を
死者は知る術もない・・
作品紹介(出版社より)
死後440年、蹴りに蹴り続けられた男、宇喜多直家。その実像を浮き彫りにする。『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』――歴史小説界に革命を起こし続ける著者が描く、戦国史上最悪と呼ばれた梟雄の素顔。
自分は何故、零落した武門に生まれたのか。どうして自分は、
このような孤独な星のもとに生まれたのか……答えは出ない。
豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家の家族をまるごと引き取る決意をする。まだ幼い八郎の中に、稀有な非凡さを見い出したがゆえである。この子であれば、やがて宇喜多家を再興できるのではと期待を寄せた。一方、八郎は孤独な少年時代の中で、商いの重要性に早くから気付き、町や商人の暮らしに強く惹かれる。青年期に差し掛かる頃、年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する――八郎は、やがて直家となる。
予め定められた星の許に生まれ、本人が好む好まざるにかかわらず、
常に極彩色に血塗られた修羅道を突き進むことになるだろう。歴史は、常に勝者の都合によって捏造され、喧伝される。敗者は、彼岸にて沈黙するのみである。少年は、運命から自由になりたかった。だが、幼少の頃から武門の再興を定められていた。織田と毛利を天秤(はかり)にかけ、夢と現(うつつ)の狭間をあがき続ける。
宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。我が死でさえも、
交渉の切り札に使う。世間でいう武士道など、直家にとってはどうでもいい。
そんなものは、犬にでも呉れてやる。
直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上や三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を削りながら戦い続ける。
直家の生来の臆病さを良く知る妻のお福。生涯の恩人となった阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長……様々な人との関わりから、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。
――人の縁で、世は永劫に回り続けていく。
作品データ
タイトル:『涅槃』下巻
著者:垣根涼介
出版社:朝日新聞出版
発売日:2021/9/17