フィクション

【本の感想】『泡の子』樋口六華|望みは、うたかたのように消えること

樋口六華『泡の子』とつけ麺
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年39冊目】

今回ご紹介する一冊は、

樋口六華

『泡の子』です。

【感想】「望みは、うたかたのように消えること」

第48回すばる文学賞受賞

トー横文学

歌舞伎町の路上で出会った
さまよう少女たちの
吐しゃ物と粘液にまみれた
苦悩する青春小説です

安寧より、死の方が近い日々

居場所のない若者たちが集う場所
新宿東宝ビルの横・通称、トー横
物語はこの路上で主人公が目覚める
ところから動き出します

・・昨夜のベッドはトー横のアスファルト

惰性のように行く先は
セフレのアパートです
ゴミとアルコールとドラッグが飽和する
汚い部屋で、主人公のヒヒルは
友人の七瀬のことを思い出す

ヒヒルと七瀬はどういう関係で
これからどこに向かうのだろう?

「望みは、うたかたのように消えること」

オヤツのようにドラッグをかじり
水分補給はアルコール
挨拶するようにセッ〇スする
そんなヒヒルちゃんの様子は
虚無です

全然、楽しそうに見えない

かつて友人だった七瀬ちゃんを
オーバードーズのさなかに幻視するヒヒル

この世の不幸をかき集めたかのような七瀬ちゃんの来歴が
明かされるのが辛い・・

物語の中盤あたりで
2人の心中シーンが描かれます

1人生き延びてしまったヒヒルの苦悩と後悔は
やがてこの世の全てを呪うようでした

また亡くなってしまってからも
インターネットのエロ画像として
いつまでも晒し者にされる七瀬ちゃんが
ひたすら悲しいです

誰にも愛されない者たち

愛されず必要とされず
泡のようにさまよう若者たちは
パチンと弾ける
死を希求しているようでした

たくさんの人たちが集まる場所で孤独を感じることは
きっととっても辛いんだろうね

あなたの居場所は安心できるとこですか?

作品紹介(出版社より)

【21世紀生まれ初受賞/第48回すばる文学賞受賞作】

新宿駅東口。退廃的で無秩序。
私はこの現実で、彼女のために何ができる?

歌舞伎町の『王』が捕まった時、七瀬は「あ」と言った。
私は、その幽かな叫び声を隣で聞いた。
ここはつまらない奴らばっかりがいる場所だけど、七瀬だけは違う。
だから、彼女の隣にいても息苦しさは感じなかった。
薬で強制的に引きずり込まれた夢の中にも、七瀬は現れる。
私は、彼女とこの場所に、まだしがみついているのかもしれない――。

これは、2007年生まれの若き著者が贈る、
終わってる世界で生きる「私たち」の物語。

作品データ

タイトル:『泡の子』
著者:樋口六華
出版社:集英社
発売日:2025/2/5

作家紹介

樋口六華 (ひぐち・りっか)

2007年生まれ。茨城県在住。
2024年「泡の子」で第48回すばる文学賞を受賞しデビュー。

樋口六華の作品紹介

泡の子」2025/2/5

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ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
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