【感想】『むき出し』 兼近大樹|なんで俺はこうなんだろう?

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むき出し|兼近大樹

ケイチャン

ケイチャン

【2022年44冊目】

今回ご紹介する一冊は、

兼近大樹 著

『むき出し』です。

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【感想】「なんで俺はこうなんだろう?」

エンタメ小説

東京で活躍している人気芸人の石山は
寝る暇もない激務の中でも、充実感ある生活を送っていた
が、その前に現れた週刊誌の記者たち
それは逃れられない、過去からの使者だった・・

実在の人気お笑い芸人EXITのボケ担当
かねちー、こと兼近大樹の初小説です
舞台は彼の出身地でもある北海道に移り
石山の過酷な来歴が語られる

「なんで俺はこうなんだろう?」

自営業の父のもと4兄妹の3男として産まれた石山くん
働かない父のために家庭は困窮していました
発達障害なのでしょうか、石山くんは学校でも
多動し、集団行動になじめません
問題は、暴力で解決します

ケンカ、万引き、悪ガキのお手本のような小中学生生活
いっぽう学業はまったくダメです
掛け算も危うく、割り算は意味不明という状態です

とにかく、俺が俺が・・なんです
俺は悪くない、俺をムカつかせた相手が悪い
俺が目立ちたい、俺をないがしろにするヤツは許さない
暴力を纏った、自意識とでもいう存在ですね
僕は友達になれそうにない笑

しかし、一本筋の通ったところもある石山くん
彼基準の正義感があり、悪友と交わっていても
完全に足を踏み外すことはありませんでした
貧困家庭ではありましたが、両親の愛が
彼を踏みとどませたのでしょう

さて義務教育を終えた石山くんは就職しますが
すぐに挫折します
ここからは様々な職業、もしくは犯罪すれすれの仕事を
やってみてはすぐに辞めるの繰り返しです

人間とは社会性動物ですから、集団で行動できない人は
いわゆるまともな職業に就けない
僕だって僕を人として尊重してくれないヤツとは、いられない
少し成長した石山くんは、ひょっとしたら俺が悪いのか?
と、考え始めます・・遅いよ

未成年者の売春容疑で逮捕される石山
そこで差し入れられた本を読むことで
石山の世界に光が差し広がる
そしてやっと気が付く・・
このままではダメだと

北海道での生活をリセットして
東京で人生をリスタートさせた石山
今までの荒んだ生活を、肥やしとし
芸人として、新しい人生を始める

自分を変えられるのは、自分だけ
周りに責任を転嫁するのでなく
自らの意思で生きていくこと
その大切さを感じました

作品紹介(出版社より)

小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。誰も本当のことを教えてくれなかった。なぜ自分だけが、こんな目にあうんだろう――上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。
ここにいるのは、出会いと決断があったから。
著者渾身の、初小説。

作品データ

タイトル:『むき出し』
著者:兼近大樹
出版社:文藝春秋
発売日:2021/10/27

作家紹介

兼近 大樹(かねちか・ だいき)

1991年北海道生まれ。
お笑いコンビ「EXIT」として活動中の漫才師。
また、音楽活動や洋服ブランドのプロデュースなど、芸人の枠を超えて幅広く活動している。
『むき出し』が初の小説作品となる

兼近大樹の作品紹介

むき出し』(2021/10/27)

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