【本の感想】『蛍たちの祈り』町田そのこ|罪に釣り合う幸福なんてない

【2025年104冊目】
今回ご紹介する一冊は、
町田そのこ 著
『蛍たちの祈り』です。
【感想】「罪に釣り合う幸福なんてない」
ろくでもない親なんて
いらないんだ!
親殺し罪を背負った人たちを描く
悲しくも暖かい群像小説です
まず登場するのが恋人に捨てられる
妊婦の幸恵(ゆきえ)さんのようす
泣いて引き留める彼女をボコボコと
殴るクズ男が憎らしい
思いつめた幸恵が向かったのは
世界で一番美しい場所
でもそこで運命の歯車が
ピタリと合わさるんだ
蛍が舞うその場所で
15年ぶりに再会するのは
同じ罪を分け合った仲間
同級生の隆之(たかゆき)
そして罪の罰は幸恵の息子
正道(まさみち)へと続いてゆくんだ
様々な『毒親』が登場する本作
身勝手な親たちに振り回され
あるいは暴力を振るわれる
子供たちが、悲しい

許せない!
罪にたいする罰がテーマ
衝動に駆られて短絡的に罪を
犯してしまう登場人物たちの
弱さに、共感を覚えます
町田作品は弱い人間の描写に
定評がありますが本作も
弱い人間が間違いを犯し
悩み後悔するシーンが多くあります
しかし弱くともしぶとく生きる
等身大のもう一人の僕らの姿に
希望が持てました
人生は諦めないのが肝要ですね

あなたは罪を犯す前に立ち止まることが出来ますか?
作品紹介(出版社より)
蛍が舞う夏祭りの夜──山間にある小さな町に暮らす中学生の坂邑幸恵と桐生隆之は、生きるために互いの秘密を守り合うことを決めた。それから十五年後、大人になった幸恵と隆之の予期せぬ再会が、家族や友人、町の人々の人生に大きな影響を与えていく。明かせぬ秘密を抱え、思い描いた道のりではなかった。それでも、この小さな光が照らす世界を大切に生きたい。一人一人のささやかな祈りを描いた、心震える傑作小説。
作品データ
タイトル:『蛍たちの祈り』
著者:町田そのこ
出版社:東京創元社
発売日:2025/7/22
作家紹介
町田そのこ (まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。
他著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『星を掬う』などがある。
町田そのこの作品紹介
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年8月)
『ぎょらん』(2018年10月)
『うつくしが丘の不幸の家』(2019年11月)
『52ヘルツのクジラたち』(2020年4月)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(2020年7月)
『星を掬う』(2021年10月)
『コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―』(2021年12月)
『宙ごはん』(2022/05/27)
『ぎょらん』2023/6/26
『コンビニ兄弟3:―テンダネス門司港こがね村店』2023/8/29
『夜明けのはざま』2023/11/8
『蛍たちの祈り』2025/7/22

