【感想】『がらんどう』大谷朝子|寂しさと諦めを受け入れるのは難しい

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がらんどう|大谷朝子

ケイチャン

ケイチャン

【2023年39冊目】

今回ご紹介する一冊は、

大谷朝子 著

『がらんどう』です。

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【感想】「寂しさと諦めを受け入れるのは難しい」

アラフォー女子の空虚感を描く現代小説

この気持ちをどう埋めたらいいの?
同世代の女子とルームシェアする
30代後半女性の寂しさと諦めを描く
正解の見えない物語です

結婚と出産

人として最も重いテーマの
ひとつではないでしょうか?
物語はベテラン経理女子、平井さんの
仕事と同居人との生活を中心に
出産できそうもない現状の
葛藤が描かれていきます

男の人を好きになったことがないの・・

交際人数は2人
だが彼らを好きだと感じたことはなく
性経験に発展することはありませんでした
私は普通ではないのだろうか?

恋愛感情が沸いてこないが
いつか子供は産んでみたい
じゃあ婚活するしかないのですが
どうにも気が進まない平井さん

「寂しさと諦めを受け入れるのは難しい」

そんな平井さんの支えとなっているのが
同居人の菅沼さんです
少し年上の彼女とは同じような境遇で
おひとり様の人生を半ば受け入れた
同士のような存在です

しかし彼女に男の影がちらつくんだ

婚活アプリでマッチングした相手が
実はマルチ商法の勧誘であった
散々なデートで傷心の平井さん
やぶれかぶれな気分で
菅沼さんに問い詰める
男ができたのか?
答えは
イエスだが不倫関係です
でした

一気に虚無感に囚われる平井さん

同士だと思った菅沼さんだが
やっぱり自分とは違う人なんだ
諦めなような気持ちになったのでしょう
そして平井さんは
お守りのように持っていた
切り札を捨てることにしたのでした

昭和時代のような家庭を築くことが
いつの間にかとても困難になってしまった
その分自由とか多様性とかに
令和はなれているのでしょうか?

違うと思います

一部の『出来る人』以外は
逆に選択肢が減り
心も金も貧しくなっている気がします
そんな今を写す物語のように思えました

寂しさを諦めざるを得ない時代

そんな世界に僕らは生きているんですね

作品紹介(出版社より)

【第46回すばる文学賞受賞作】

「ルームシェアっていうの、やらない? もっと広い部屋に住めるし、生活費も節約できるし、家事も分担できるよ」
「若い人たち同士ならわかるけど……本気なの?」
「四十過ぎた女二人が同居しちゃいけないって法律はないよ」
「でも、普通はしないよ」

人生で一度も恋愛感情を抱いたことがない平井と、副業として3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアを作り続ける菅沼。
二人組アイドルグループ「KI Dash」の推し活で繋がった二人のコロナ禍での共同生活は、心地よく淡々と過ぎていくが——

恋愛、結婚、出産、家族……どんな型にもうまくはまれない、でも、特別じゃない。
《今》を生きるすべての人へ、さまざまな属性を越えて響く“わたしたち”の物語。

作品データ

タイトル:『がらんどう』
著者:大谷朝子
出版社:集英社
発売日:2023/2/3

作家紹介

大谷朝子(おおたに・あさこ)

1990年千葉県生まれ。
2022年、本作で第46回すばる文学賞を受賞。

大谷朝子の作品紹介

がらんどう』(2023/2/3)

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