ケイチャン
【2024年42冊目】
今回ご紹介する一冊は、
村木嵐 著
『まいまいつぶろ』です。
もくじ
【感想】「我らが運命は一心同体」
第170回直木賞候補作
言語不明瞭な身体障害者の将軍
徳川家重(いえしげ)と
小姓の大岡忠光(ただみつ)の
友情を描く人間ドラマです
その言葉が本当か、誰も解らない
名君、徳川吉宗の長男として
産まれたのが家重です
しかし生まれながら障害があり
しっかり言葉が話せません
手足に痺れがあり筆談も出来ない
尿を我慢することも出来ず漏らしちゃうし
ちゃんと歩けない立てない座れない
これで将軍の跡継ぎが務まるのか?
廃嫡も噂される時に出会うのが
忠光でした
そう、彼だけが家重の言葉を
理解できたのです
・・ホントかよ?
忠光がテキトーに
自分の都合よいことばっか
言ってるんじゃないのか!
疑心暗鬼が渦巻き
後継者争いに揺れる江戸城で
家重と忠光は臣従関係を超えた
友情と信頼関係を築いてゆく
肉体の牢獄につながれた家重
聡明な頭脳を持ちながら
誰にも想いを伝えられず
己の頭の中から一歩も
動けない家重が、辛い・・
そんな中、忠光を得て
言葉を交わす喜びに震える
家重の姿に、涙する・・
よかったね
しかしよかったね、で済まないのが
徳川将軍の跡継ぎとゆー重責です
将軍の跡継ぎにふさわしくない
の姿に反発する家臣もいる
そこで忠光がとった方針が
家重の口という役割に徹すること
余計なことは
言わない聞かない話さない
忠義に徹する忠光の姿が清らかです
ハンディキャップを背負った将軍を
支える忠臣の一生を描く本作
忠義を超える真の友情に
心が温かくなりました
最後に
この体で良かった・・
とつぶやく家重の脳裏には
いつまでも忠光が居るのでしょう
支え合って生きる
素晴らしさが伝わる
人間ドラマでした
作品紹介(出版社より)
暗愚と疎まれた将軍の、比類なき深謀遠慮に迫る。口が回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重。しかし、幕府の財政状況改善のため宝暦治水工事を命じ、田沼意次を抜擢した男は、本当に暗愚だったのか――? 廃嫡を噂される若君と後ろ盾のない小姓、二人の孤独な戦いが始まった。
第12回 日本歴史時代作家協会賞作品賞、第13回 本屋が選ぶ時代小説大賞 受賞。
作品データ
タイトル:『まいまいつぶろ』
著者:村木嵐
出版社:幻冬舎
発売日:2023/5/24
作家紹介
村木嵐(むらき・らん)
1967年京都市生まれ。会社勤務等を経て、司馬遼太郎氏の夫人である福田みどり氏の個人秘書を十九年間務める。
2010年『マルガリータ』で第十七回松本清張賞を受賞し、作家デビュー。
2023年『まいまいつぶろ』で第十三回本屋が選ぶ時代小説大賞、第十二回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞。
村木嵐の作品紹介
『マルガリータ』2010/6/25
『遠い勝鬨』2012/2/25
『船を待つ日 小坂屋お嬢の江戸見廻り始末』2012/6/25
『多助の女』 2013/5/15
『雪に咲く』2013/12
『船を待つ日 – 古物屋お嬢と江戸湊人買い船』2014/5
『風を待つ日 – 古物屋お嬢と知恵伊豆様の落書』 2014/6/25
『頂上至極』2015/10
『島津の空 帰る雁』2015/12/10
『火狐 八丁堀捕物始末』2016/2/15
『地上の星』2016/9/25
『やまと錦』2016/9/25
『夏の坂道』2019/3
『天下取』 2020/3/24
『せきれいの詩』2020/6
『にべ屋往来記』2022/1/11
『阿茶』2022/3/24
『まいまいつぶろ』2023/5/24