【感想】『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子|守りたいと思わせる、純真なこころ

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木挽町のあだ討ち|永井紗耶子

ケイチャン

ケイチャン

【2024年41冊目】
今回ご紹介する一冊は、

永井紗耶子 著

『木挽町のあだ討ち』です。

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【感想】「守りたいと思わせる、純真なこころ」

歴史・時代小説

直木賞・山本周五郎賞、ダブル受賞作

雪降る夜、白装束の若侍が成した
完璧なるあだ討ちは何だったのか?
江戸の人間模様が現代の私たちの
胸を打つ、講談調小説です

そのあだ討ちは、正義なのか?

2年前に江戸の話題をさらった
見事なる、あだ討ち
その真相を探るべく
1人の若侍が訪れるのが
ある芝居小屋でした

あだ討ちを目撃した関係者に
事情聴取をするようすは
まるで名探偵のようです
ミステリー要素に興味がそそられる

若侍の質問はあだ討ち事件に留まらず
芝居小屋の目撃者たちの来し方にも及ぶ
江戸の『悪所』とも呼ばれる
芝居小屋稼業に就くいきさつが語られる

それは産まれ落ちた途端に決まる
親ガチャの悲喜劇
女郎の息子や孤児もいれば
武士の家から転身したものもいる
まるで吹き溜まりのようだが
それゆえ人情に溢れた芝居小屋の人たち

あだ討ちの真相を知り
芝居小屋の人たちの人生を辿り
そして故国に戻った若侍は
何を思うのでしょうか?

「守りたいと思わせる、純真なこころ」

まるで寄席で講談を聴いている
かのような語り口調の文章に
すすっと江戸の芝居小屋の中に
吸い込まれていきます

皆が言う
あれは立派なあだ討ちでした、と

しかし話が進むうちに
ひとつ、またひとつと
あれれ、もしや?と思う
ジグソーパズルが見つかる

そして江戸時代の人間模様

今とは違う身分制度社会ですが
現代にも同じような
悩みがあるよな、と
共通点に気づかされます

『悪所』に流れ着いた人々の
それぞれの人間ドラマに
引き込まれるように
本書の世界にのめり込んでゆく

思い悩み運命に引き寄せられて
芝居小屋にたどり着いた人たちが
あだ討ちの若侍、菊之助に抱いた想いは
・・守りたい・・という庇護の心でした

芝居は主役だけでは成り立たない

客を呼ぶもの
主役を囲む脇役たち
衣装を縫うもの
小道具を作るもの
脚本を書くもの

あだ討ちも1人ではなかったのだ

謎を解くミステリー要素もあり
江戸下町の人情ドラマもあり
武士のさだめの忠義心も描く
実に盛りだくさんの内容でした

あだ討ちという鮮烈な
事件の裏方を描く本作
胸をすく結末に、あなたも
よっ!菊之助!!と大声を
上げたくなることでしょう

作品紹介(出版社より)

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。現代人の心を揺さぶり勇気づける令和の革命的傑作誕生!

作品データ

タイトル:『木挽町のあだ討ち』
著者:永井紗耶子
出版社:新潮社
発売日:2023/01/18

作家紹介

永井 紗耶子(ながい・さやこ)

1977年、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。
2010年、「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。
2020年に刊行した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。
2022年『女人入眼』が第一六七回直木賞の候補作に。
他の著書に『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『横濱王』などがある。

永井紗耶子の作品紹介

『絡繰り心中』2014/3/6
『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』 2016/03/13
『大奥づとめ』2018/7/20
『横濱王』2018/09/11
『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』 2020/06/17
『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』2021/04/26
『女人入眼』2022/4/10
木挽町のあだ討ち』2023/01/18

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