ケイチャン
【2024年139冊目】
今回ご紹介する一冊は、
朝比奈秋 著
『サンショウウオの四九日』です。
もくじ
【感想】「ただ生きているだけで、大正解!」
2つのココロが
1つのカラダに
2心1体の姉妹の憂いを描く
結合双生児小説です
ケイチャン
みなさんはココロが
どの臓器に宿っていると思いますか?
昔の人は心臓にあると言い
今は脳と考えるのが多いようですね
6歳の杏(あん)ちゃんは
あるとき自分の中に
もう1人いることに気づく
それが妹の瞬(しゅん)ちゃんです
ああ、そういうことね!
と、納得するのが
つねづね杏ちゃんの様子に
違和感を覚えていた家族たち
こうして2つの戸籍を持つ
1つの身体が生まれたのでした
杏ちゃんと瞬ちゃんは
半分ずつ真ん中でくっついていて
なので左右が非常にアンバランス
面長の左顔と、丸い右顔
左はいかり肩で、右はなで肩
非対称な姿に、会う人は驚きます
臓器はというと
左脳と右脳の間に小さな脳があり
子宮は2部屋に分かれており
2つある臓器もあります
ケイチャン
ではココロはどうなんだろう?
思考は別々だが
感情は混ざることがあり
記憶は共有することがある
マーブル模様な気持ち
自分たちの特異な存在に
杏と瞬の2人は
軽く絶望しているようです
・・普通になんて、生きられないよ
実は2人の父親も双子で
特異な出生をしており
兄弟は強い絆で結ばれていました
マイペースに(?)動揺する父親
ケイチャン
え!双子って一緒に死ぬもんじゃないの?
死についてグルグルと考える杏
いっぽう瞬は自身の消滅を願う
2つのココロが絡み合うように
不条理なカラダの中を走ります
自問自答するような
2人のテンポ良い会話で
ストーリに引き込まれてゆく
ケイチャン
常に対話する相手がいるって
イイね
物語は伯父の四九日法要が
明けた朝に、杏と瞬が
新しい気持ちで1日を
始めるシーンで終わります
ケイチャン
それは特異な自身の
心体を受け入れて
あらためて2人で
生きて行こうとするようでした
ケイチャン
特異な双子の半生を描く物語
兄弟姉妹って
いいものですね
作品紹介(出版社より)
周りからは一人に見える。でも私のすぐ隣にいるのは別のわたし。不思議なことはなにもない。けれど姉妹は考える、隣のあなたは誰なのか? そして今これを考えているのは誰なのか――三島賞受賞作『植物少女』の衝撃再び。最も注目される作家が医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍を描く、世界が初めて出会う物語。
作品データ
タイトル:『サンショウウオの四九日』
著者:朝比奈秋
出版社:新潮社
発売日:2024/7/12
作家紹介
朝比奈秋(あさひな・あき)
1981年京都府生まれ。
医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。
2023年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。
2023年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞。
『サンショウウオの四十九日』が第171回芥川龍之介賞候補となる。
他の作品に「私の盲端」「受け手のいない祈り」などがある。
朝比奈秋の作品
『私の盲端』2022/2/7
『植物少女』2023/1/10
『あなたの燃える左手で』2023/6/19
『サンショウウオの四十九日』2024/7/12