【感想】『おいしいごはんが食べれますように』高瀬隼子|仕事の厄介者は、職場のアイドル?

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おいしいごはんが食べられますように|高瀬隼子

ケイチャン

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【2022年126冊目】
今回ご紹介する一冊は、
高瀬隼子 著
『おいしいごはんが食べれますように』です。

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【感想】「仕事の厄介者は、職場のアイドル?」

第167回芥川賞受賞作

仕事をしなきゃ生活できないし
ごはんを食べなきゃ生きて行かれない
お仕事小説+ごはん
常識の理不尽さと向き合う物語です

タイトルになっている、おいしいごはんを作る人
それが芦川(あしかわ)さんです
少し体の弱い彼女、残業休出はしないどころか
会社を早退することも、ままあります
そんな時彼女は手作りのお菓子を職場で配り
ごめんなさい、これ食べてください
と言ってニッコリ笑うのだ
これにはオッちゃんたちはイチコロですねw

しかしそんな芦川さんを苦々しく思う人がいた
それが芦川さんと交際している二谷(にたに)クンと
芦川さんの後輩女子の押尾(おしお)ちゃんです
ねえ、芦川さんに意地悪しませんか?
共通の不満で接近する2人
この2人の目線で物語は進む

「仕事の厄介者は、職場のアイドル?」

自分の弱さ出来なさを盾にして
嫌な仕事やめんどう事を免除される芦川さんに
2人の不満は徐々に溜まっていく

そして2人は芦川さんの捨てられた美味しいモノを
わざわざ彼女の机の上に置いておくという
意地悪を始めるのだが
その結末は押尾ちゃんが
辞職せざるを得なくなるという
完敗に終わる

おいしいごはんは楽しくて幸せで当たり前
そんな常識にアンチテーゼをするこの物語
一見弱そうな芦川さんが実は強く
自分のスタイルを貫きとおし
しかも大半の同僚の指示を得るところが怖い

いっぽうで押尾ちゃんは
日々残業もこなし仕事を頑張るのですが
頑張り過ぎちゃって苦しくなって
最後は職場を追い出されることになる
報われない役柄ですね

何がいけなかったのでしょうか?

僕はやっぱり1人で頑張るところが
いけなかったと思うのです
ヤレるとこまで自分でヤル
一見良いことのように思えるのですが
仕事はみんなでやっているもの
無理せずに人を頼ることも
大切なのでしょう

この物語の特色は影の主人公である
芦川さんの姿を二谷クンと押尾ちゃんに
語らせるところです
それで芦川さんの不気味さが際立つ

グイグイと自分の価値観を押し付けてきて
それを通しちゃう芦川さんの姿に
常識に対抗する難しさを覚えることでしょう

あなたの周りにも芦川さんのような
無敵の人がいませんか?

作品紹介(出版社より)

第167回芥川賞受賞!

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

作品データ

タイトル:『おいしいごはんが食べれますように』
著者:高瀬隼子
出版社:講談社
発売日:2022/3/24

作家紹介

高瀬 隼子(たかせ・じゅんこ)

1988年愛媛県生まれ。立命館大学部文学部卒業。
2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。
著書に『犬のかたちをしているもの』『水たまりで息をする』(ともに集英社)がある。

高瀬隼子の作品紹介

『犬のかたちをしているもの』2020/02/05
『水たまりで息をする』2021/07/13
おいしいごはんが食べられますように』2022/03/24

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