【感想】『蛇を踏む』川上弘美|葛藤する日々に、終わりはない

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蛇を踏む|川上弘美

ケイチャン

ケイチャン

【2023年138冊目】

今回ご紹介する一冊は、

川上弘美 著

『蛇を踏む』 です。

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【感想】「葛藤する日々に、終わりはない」

第115回 芥川賞受賞作

蛇を踏んだら取り憑かれた
家に棲みつき、ご飯を作り
まるで母親のように世話を焼く
そいつが言うんだ・・
蛇の世界へおいでよ、と
感性を試されるような純文学です

蛇の世界って、なんなのさ??

あなたはこの世界に
不安を抱いていませんか?
安定しているようでも
僕らはしょせん生き物だから
ちょっとのことで体は傷つくし
ましてや、心は些細なことでも
揺れてしまうのが宿命ですよね

蛇ふんじゃった~♪
蛇をふんじゃった~ら~♪
ぶわっと消え~てぇ♪
とりつかれちゃったぁ~♬

と、イキナリわけわかんない
展開で始まる本作
え!蛇ってなんですか?
しかしその説明は
もちろんありません

自分で考えて、感じろ!なんです笑
むろん僕はこのような作品が
大好きですww
さあ蛇って、なんなんだ?

50才くらいの女性の姿をした
蛇との生活が始まります
あったかいご飯を作ってくれ
毎夜ビールで乾杯する日々
まるでお母さんといっしょのようです

でも蛇が誘惑してくるんだ
蛇の世界においでよって
そして責めてくるんだ
知らないふりを、するなって

いったい蛇は
私をどうしたいのだろうか?

「葛藤する日々に、終わりはない」

そのヒントとなるのは
主人公の勤め先の夫婦です
修行先の奥さんと
駆け落ちした八歳年下の旦那さん
この夫婦にも
蛇が憑いていたんです

駆け落ちするくらいだから
燃え上がったに違いないのだが
愛情はすでに影を潜め
陰のある夫婦生活が描かれる

駆け落ちしたのに
ぜんぜん幸せそうに見えません

奥さんは後悔しています
蛇の世界に誘われたのに
私は行かなかった・・
行ってたら幸せだったろうか?

勤め先夫婦の姿を見てなお
蛇の世界に行くことを拒む私
実力行使に出た蛇と
取っ組み合いをするシーンで
物語は終わります

蛇とは
人の倫理を外れたもの
本能で動くもの
感情に従うものの
象徴のように感じました

感情と理性が
せめぎ合う様を描く本作
それはきっと人間なら
避けられないことなのでしょう

終わることのない
せめぎ合いは
もつれ絡み合う
2匹の蛇のようです

説明することが
不可能な世界観の本作
得体の知れない、何かを見て
怖くも憧れてしまいそうな読後感が
僕に、からみつくようでした

作品紹介(出版社より)

京都が生んだ、やさしい奇跡。

ホルモー・シリーズ以来16年ぶり
京都×青春感動作

女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。
謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。

京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは――。

今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない
人生の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る傑作2篇

作品データ

タイトル:『蛇を踏む』
著者:川上弘美
出版社:文藝春秋
発売日:1996/8/30

作家紹介

川上弘美(かわかみ・ひろみ)

1958年、東京都生れ。
1994年「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞。
1996年「蛇を踏む」で芥川賞を受賞。
1999年『神様』でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞を受賞。
2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞を受賞。
2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞を受賞。
2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
2015年『水声』で読売文学賞を受賞。
2016年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。
その他の作品に『椰子・椰子』『おめでとう』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『古道具 中野商店』『夜の公園』『ざらざら』『パスタマシーンの幽霊』『機嫌のいい犬』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『猫を拾いに』『ぼくの死体をよろしくたのむ』『某』『三度目の恋』などがある。

川上弘美の作品

『物語が、始まる』 1996/08/01
蛇を踏む』 1996/08/30
『いとしい』 1997/09/01
『溺レる』 1999/08/01
『あるようなないような』 1999/11/01
『おめでとう』 2000/11/01
『なんとなくな日々』 2001/03/07
『センセイの鞄』 2001/06/01
『ゆっくりさよならをとなえる』 2001/11/24
『パレード』 2002/04/25
『龍宮』 2002/06/27
『光ってみえるもの、あれは』 2003/09/10
『ニシノユキヒコの恋と冒険』 2003/11/26
『恋愛小説』 2005/01/26
『古道具 中野商店』 2005/04/01
『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』 2005/09/01
『此処彼処』 2005/10/01
『夜の公園』 2006/04/22
『ざらざら』 2006/07/20
『ハヅキさんのこと』 2006/09/30
『真鶴 2006/10/30
『はじめての文学 川上弘美』 2007/05/15
『大好きな本 川上弘美書評集』 2007/09/07
『東京日記2 ほかに踊りを知らない。』 2007/11/17
『風花』 2008/04/04
『どこから行っても遠い町』 2008/11/01
『これでよろしくて?』 2009/09/01
『パスタマシーンの幽霊』 2010/04/22
『機嫌のいい犬』 2010/10/26
『東京日記3 ナマズの幸運。』 2011/01/26
『天頂より少し下って』 2011/05/23
『神様 2011 2011/09/21
『七夜物語(上・下)』 2012/05/18
『なめらかで熱くて甘苦しくて』 2013/02/28
『猫を拾いに』 2013/10/31
『東京日記4 不良になりました。』 2014/02/14
『水声』 2014/09/30
『大きな鳥にさらわれないよう』 2016/04/22
『このあたりの人たち (Switch library) 』2016/06/29
『東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。』 (5) 2017/04/26
『森へ行きましょう』 2017/10/11
『某』 2019/09/12
『三度目の恋』2020/09/18
『わたしの好きな季語』 2020/11/20
『東京日記6 さよなら、ながいくん。』2021/03/24
『東京日記7 館内すべてお雛さま。』2023/03/27
恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』 2023/08/24

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