ケイチャン
【2022年7冊目】
今回ご紹介する一冊は、
辻堂ゆめ 著
『トリカゴ』です。
もくじ
【感想】「ここ以外居場所なんてない!」
社会から見捨てられた
無国籍者をテーマとした
骨太の物語です
傷害事件を追ううちにたどり着いた
あるコミュニティ
そこは
無国籍者のユートピアだった
ある食品会社の片隅
封鎖されたロープの向こうにある
コンテナハウス
そこは寄る辺なき者らの
最後の砦だった
国籍をもたない
無就学、無保険
語られる無国籍者たちは
あらゆる社会保障から
見捨てられたあやうい存在
その境遇に心が痛みます
そこに暮らす兄妹
もしやあの『鳥籠事件』で
鳥と一緒に育てられ
言葉も話せない遺棄児童
誘拐されて行方不明となった
2人なのか!?
捜査を続ける警察官
森垣里穂子と共に
現代の無国籍者問題を
知ることになる・・
物語は緊迫感を持って進みます
あまりに危うい無国籍者たちの生活
それは張りつめた糸か
ギリギリのバランスを保つ
積み木のよう
なにかあれば
たやすく破綻する
しかし登場人物たちは
良く動くし
明るいのです
そう、無国籍者だって
僕たちと変わらない
毎日があるのです
里穂子は悩む
私の捜査によって
彼らの生活が
脅かされるのではないかと
登場人物の心理描写が
丁寧に描かれて
すうっと彼らに
寄り添うことができます
事件の解決と
無国籍者のために
里穂子は全力を尽くす
警察官だからではない
同じ世界に暮らす
人だから!
そして明かされる
鳥籠事件の真相・・
さすが才媛、辻堂ゆめ
この大胆なカラクリは
予想もしなかったぜ
ラスト
未来向かって
開かれる大団円に
あなたもきっと
この社会に希望が持てることでしょう
無国籍という重いテーマを通して
人と人の繋がりを描く
見事な物語です
作品紹介(出版社より)
殺人未遂事件の容疑者は、無戸籍だった。
刑事の里穂子は捜査を進めるうちに、
かつて日本中を震撼させた〝鳥籠事件″との共通点に気づく。
胸を衝く真実に心震える、辻堂ゆめの到達点。
『十の輪をくぐる』の著者、最高の力作!蒲田署強行犯係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住む生活共同体を発見する。その共同体“ユートピア”のリーダーはリョウ、その妹のハナが事件の容疑者となっていた。彼らの置かれた状況を知った里穂子は、捜査が“ユートピア”を壊すのではないかと葛藤を抱くようになり……『十の輪をくぐる』の著者渾身の書き下ろし長編ミステリ。
作品データ
タイトル:『トリカゴ』
著者:辻堂ゆめ
出版社:東京創元社
発売日:2021/9/30
電子書籍はこちら↓
作家紹介
辻堂ゆめ (つじどう・ゆめ)
1992年神奈川県生まれ。
2015年『いなくなった私へ』で第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、デビュー。
2021年『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補。
主にミステリーを執筆。
辻堂ゆめの作品紹介
『いなくなった私へ』(2015/2/10)
『コーイチは、高く飛んだ』(2016/3/11)
『あなたのいない記憶』(2016/10/22)
『悪女の品格』(2017/7/28)
『片想い探偵 追掛日菜子』(2018/6/8)
『今、死ぬ夢を見ましたか』(2019/3/6)
『お騒がせロボット営業部!』(2019/7/10)
『君の想い出をください、と天使は言った』(2019/8/23)
『昨夜は殺れたかも』(共著)(2019/9/20)
『卒業タイムリミット』(2019/11/20)
『ヒマワリ高校初恋部!』(2020/1/8)
『あの日の交換日記』(2020/4/18)
『 図書館B2捜査団 秘密の地下室 』 (2020/6/10)
『 図書館B2捜査団 人気占い師の闇 』 (2020/9/16)
『またもや片想い探偵 追掛日菜子』(2020/10/7)
『十の輪をくぐる』(2020/11/26)
『ようこそ来世喫茶店へ〜永遠の恋とメモリーブレンド〜』(2021/1/28)
『僕と彼女の左手』(2021/3/24)
『 初恋部 恋はできぬが謎を解く』 (2021/6/4)
『トリカゴ』(2021/9/30)