【感想】『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーウェンズ|希望も失望も、ボートに乗った男が連れてくる

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ザリガニの鳴くところ|ディーリア・オーウェンズ

ケイチャン

ケイチャン

【2022年169冊目】

今回ご紹介する一冊は、

ディーリア・オーウェンズ 著

『ザリガニの鳴くところ』です。

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【感想】「希望も失望も、ボートに乗った男が連れてくる」

偏見と差別が理性を曇らせるのか
貧乏白人(ホワイトトラッシュ)の少女がとった
サバイバルを描くミステリー小説です

田舎育ちの僕は幼少期に
さんざんザリガニくん達と遊びました
同じくザリガニと戯れた経験のある方は
ん!このタイトルは何?と思うことでしょう

なぜならハサミをもがれても
尻尾を引っこ抜かれても
ザリガニはけっして
鳴かないのです

そうです
ザリガニの鳴くところなど
存在しないのです

母はひとり家を捨て
兄姉も離散
父もある日消えて
ひとり残されたカイアは
『湿地の少女』と呼ばれ
いないものとされた

物語は冒頭にひとりの裕福な
青年の死が述べられて
カイアの成長と共に
その死の詳細が明らかにされてゆく
カイアは青年の死に関係あるのか?

「希望も失望も、ボートに乗った男が連れてくる」

まだ幼いカイアがひとり残されて
人里離れた湿地で寂しく過ごすシーンに
胸が痛くなることでしょう
孤独と向き合う日々

しかし湿地の豊かな自然が
カイアの友となります
貝を採り魚を釣り
鳥たちと遊び
ゆりかごのような湿地で過ごす日々

魅惑的な湿地の描写が
本書の素晴らしいところです
こんな所ならば僕も
住んでみたいと思うほどに

やがて美しく成長したカイアの元に
2人の男が通うようになる
彼女に文字を教えた幼なじみのテイトと
やんちゃな陽キャで女好きのチェイスです

だがチェイスの裏切りによって
カイアは彼と敵対関係になってしまった
チェイスの暴力性に恐怖するカイア
このままでは無事にいられない・・

カイアは湿地の自然からオスとメスの
生存戦略の違いを学んでいました
あるオスは自らを飾りたてメスと交尾し
蛍とカマキリのメスは交尾後オスを喰ってしまう

自然の生存競争は残酷であり
そこに善悪はありません
湿地の自然を教師としたカイアのとる
生存戦略とはいかに?

カイアとテイトの初々しい
恋の物語も素敵です
人種差別される黒人との
暖かい交流にもホロリとされます

対して田舎の閉鎖的で偏見に満ちた
無責任な噂話を酒の肴にして
よそ者を生け贄にするような
街の人々の姿が恐ろしい

湿地に様々な生き物があふれているように
人間社会も様々な性格の者がいる
多様性の美しさと残酷さを描いた
傑作でした

大多数の人にはないものと同然な湿地
でも実はそこが
誰かにとっては
楽園であるのかも知れませんね

作品紹介(出版社より)

この少女を、生きてください。
2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位! 全世界1000万部突破、2019年・2020年アメリカでいちばん売れた本

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。

作品データ

タイトル:『ザリガニの鳴くところ』
著者:ディーリア・オーウェンズ
出版社:早川書房
発売日:2020/3/5

作家紹介

ディーリア・オーウェンズ

1949年アメリカジョージア州生まれ。アメリカ合衆国の作家であり動物学者。
2019年処女小説 『ザリガニの鳴くところ』で、ニューヨークタイムズフィクションのベストセラーのトップに25週間ランキングという記録を達成。 この本は、ニューヨークタイムズのベストセラーリストに1年以上リスト入りしている。

ディーリア・オーウェンズの作品紹介

ザリガニの鳴くところ』(2020/3/5)


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