【感想】月村了衛『脱北航路』|組織は人のためにあるんじゃないのか?

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脱北航路|月村了衛

ケイチャン

ケイチャン

【2022年67冊目】

今回ご紹介する一冊は、

月村了衛 著

『脱北航路』です。

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【感想】「組織は人のためにあるんじゃないのか?」

緊迫の軍事アクション!

みなさんは潜水艦に乗ってみたいと思いますか?
僕はちょっと怖いんですよね
だって密閉され外も見えない海中なんですよ
ましてそんな状態で、戦闘をするなんて・・

この壊れた国で、もう生きていけない

北朝鮮の軍人、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐は
千載一隅の機会に恵まれた
それは・・大規模軍事演習と、拉致被害者の女性
このチャンスに賭けるしかない!

もはや金一族の政治体制を維持するだけの存在となった北朝鮮
そこに正義も理論も何もない、ただ粛清されないためだけに
明らかにおかしい現状に目をつむり、上意に盲従する日々
この国は壊れてしまったんだ・・

深い絶望と熾火のような怒り
そして脱北を決意する
拉致被害者の女性、広瀬珠代を連れて日本に行くのだ!

横田めぐみさんをモデルとしているようです
長年の拉致生活で体調を崩すも、たぐいまれなる経験で
強靭な意思と深い洞察力を身に着けた珠代さん
彼女もこのチャンスに賭けます
わたしは生きて再び、父と母に会うんだ!

「組織は人のためにあるんじゃないのか?」

間一髪出航することが出来た桂東月(ケ・ドンウォル)の船
ロメオ級攻撃型潜水艦11号、旧式ながら歴戦の古強者です
そしてここからが本番
息つく間もない怒涛の戦闘シーンを連続です

演習中に脱北なんて許すことは出来ない
北朝鮮軍のメンツにかけて、潜水艦11号を沈めるのだ!

戦闘機、戦闘ヘリ、コルベット軍艦
次々と襲いくる敵との交戦で
もはや満身創痍、武器弾薬も尽きかける潜水艦11号

もうね手に汗握らずにいられない
ハラハラの戦闘シーンの連続なのです
これは面白い!夢中になれる!

そして日本まであと少しもうちょっとという時あらわれるのは
北朝鮮軍最高の艦長と呼び名も高い、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐
の親友でもある羅済剛(ラ・ジェガン)のロメオ型潜水艦9号
上意は絶対なんだドンウォル、おまえは俺が沈める・・

同型潜水艦同士しかも親友同士の2隻と2人
どちらかが海の藻屑となる死闘が始まる・・

さてアクションシーンの多いこの作品ですが
もうひとつの柱となるのが、硬直した組織への批判です
そもそも組織とは人のためにあるはずのものですが
組織のための組織というか、組織が第一となることは
みなさんもご承知のことと思います

現在の政治体制を維持しようとする北朝鮮
批判を恐れ何もしない出来ない日本の自衛隊や海上保安庁
見て見ぬふりをし、結果人を見殺しにする

本書はそんな硬直した組織を
いやいやそれはおかしいよ
人を救うためにこそ、組織はあるのでは?
と鋭く批判しています

あなたは組織の命令に背いてでも
人のために、動くことが出来ますか?

作品紹介(出版社より)

「彼女は無理やりこの国に
連れてこられただけなのだ」

この女性(拉致被害者)を連れて、
日本に亡命するーー。

祖国に絶望した北朝鮮海軍の精鋭達。
45年前、島根の海岸で拉致された日本人女性。
彼らを乗せた潜水艦が辿る壮絶な運命とは?

「お父さん、お母さん……日本に帰りたいよっ」

北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。国の威信をかけたこの行事で、桂東月(ケ・ドンウォル)大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。しかも、拉致被害者の女性を連れて--。だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして……。息つく間もなく送り込まれる殲滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか? 極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。超弩級エンターテインメント

作品データ

タイトル:『脱北航路』
著者:月村了衛
出版社:幻冬舎
発売日:2022/4/13

作家紹介

月村 了衛(つきむら りょうえ)

1963年大阪府生れ。早稲田大学第一文学部卒。
2010年『機龍警察』で小説家としてデビュー。冒険小説の新たな旗手として高く評価される。
2012年『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞を受賞。
2013年『機龍警察 暗黒市場』で吉川英治文学新人賞を受賞。
2015年『コルトM1851残月』で大藪春彦賞を、『土漠の花』で日本推理作家協会賞を受賞。
2019年『欺す衆生』で山田風太郎賞を受賞している。
他の著書に『東京輪舞(ロンド)』『奈落で踊れ』『白日』『機龍警察 白骨街道』『ビタートラップ』などがある。

月村了衛の作品紹介

『機龍警察』(2010年3月)
『機忍兵零牙』(2010年9月)
『機龍警察 自爆条項』(2011年9月)
『機龍警察 暗黒市場』(2012年9月)
『神子上典膳 一刀流無想剣 斬』(2012年10月)
『黒警』(2013年9月)
『コルトM1851残月』(2013年11月)
『機龍警察 未亡旅団』(2014年1月)
『土漠の花』(2014年9月)
『機龍警察 火宅』(2014年12月)
『槐(エンジュ)』(2015年3月)
『影の中の影』(2015年9月)
『ガンルージュ』(2016年2月)
『水戸黄門 天下の副編集長』(2016年7月)
『黒涙』(2016年10月)
『追想の探偵』(2017年4月)
『機龍警察 狼眼殺手』(2017年9月)
『コルトM1847羽衣』(2018年1月)
『東京輪舞』(2018年10月)
『悪の五輪』(2019年5月)
『欺す衆生』(2019年8月)
『暗鬼夜行』(2020年4月)
『奈落で踊れ』(2020年6月)
『白日』(2020年11月)
『非弁護人』(2021年4月)
『機龍警察 白骨街道』(2021年8月)
『ビタートラップ』(2021年10月)
脱北航路』(2022年4月)

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