ケイチャン
【2022年6冊目】
今回ご紹介する一冊は、
李琴峰 著
『生を祝う』です。
もくじ
【感想】「人には生まれない権利がある!」
芥川賞の前作『彼岸花が咲く島』は
キテレツともいえる変な設定でしたが
今作も負けずトンデモナイ設定です
それが・・
『出生の合意』
冒頭で上司が訴えられる
それが出生強制罪
え!それ何ですか?
そう、主人公の彩華(あやか)が住む
近未来の日本では
出産の前に胎児へ
ねえ、生まれたい?生まれたくない?
と、確認をとるのです
ん~生まれたーい!
となれば
めでたくご出産
え~ヤメとくわー
ときたら
残念ながら
出生取消手術(キャンセル)
となります
冒頭の上司の奥さんが
胎児の娘が出生を
拒否したにもかかわらず
産んでしまった
後年、何で産んだんだ!
と娘に訴えられたのです
・・すごい皮肉が効いた
トンデモ設定です
素晴らしい
さてこの合意出産制度のもとで
疑問なく過ごしてきた彩華は
上司に怒りを感じます
出生強制って、ひどい!
親として許せない!
生まれない権利をどう思ってるんだ!
と
そして彩華は妊娠していました
読書好きの皆さまは
ここで、ああそうねと
気付くでしょう
そう
彩華も胎児から
出生拒否(リジェクト)
されるのです
上司への怒りがブーメランとなって
自らのお腹に突き刺さる大惨事
さあ、彩華はいったいどうするのか?
僕たちが普段
あまり意識せずに従っている
社会制度や
当たり前のことと信じている
倫理観に対して
それってどうなの?
と疑問を投げかける本作
奇抜とも言える
李琴峰のトンデモ設定は
その当たり前のベールを
はぎ取るチカラがあります
最後に選び取った
彩華の選択に対して
あなたはどう思いますか?
作品紹介(出版社より)
「あなたは、この世界に生まれてきたいですか」
子どもを産むためには、その子からの同意が必要となる世界を舞台にした衝撃作。
『彼岸花の咲く島』で芥川賞を受賞した著者による、芥川賞受賞第一作。
作品データ
タイトル:『生を祝う』
著者:李琴峰
出版社:朝日新聞出版
発売日:2021/12/7
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作家紹介
李琴峰 (り・ことみ)
日中二言語作家、日中翻訳者、通訳者。
1989年台湾生まれ。
2013年来日。
2017年初めて第二言語である日本語で書いた小説『独り舞』にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞。
2019年小説『五つ数えれば三日月が』で、第161回芥川龍之介賞、第41回野間文芸新人賞候補に。
2021年小説『ポラリスが降り注ぐ夜』で、第71回芸術選奨新人賞を受賞。
2021年小説『彼岸花が咲く島』で第34回三島由紀夫賞候補、第165回芥川龍之介賞受賞。
李琴峰の作品紹介
『五つ数えれば三日月が』(2019/7/31)
『独り舞』(2018/3/29)
『星月夜』(2020/7/15)
『ポラリスが降り注ぐ夜』(2020/2/28)
『彼岸花が咲く島』(2021/6/25)
『生を祝う』(2021/12/7)